東京大学などは不妊症で受精卵が子宮に着床できない原因の一端を解明した。特定の遺伝子の働きを抑えるたんぱく質が作られないと、子宮に着床する条件がそろわなかった。世界保健機関(WHO)の報告書によると、世界の約6人に1人が不妊を経験しているとされる。体外受精などの技術は進歩しているものの、受精卵が着床しない着床不全は原因がわからない場合も多い。研究成果は不妊症の原因の診断や治療に役立つとみている。
着床不全の原因がわかると診断や治療に役に立つ=東京大学提供
ヒトの受精卵の着床では、受精卵が子宮の内側の壁にくっついたあとに組織内に潜り込む。子宮の壁の中の間質細胞という細胞が脱落して隙間ができることで潜り込みができるとされている。子宮の壁の中で受精卵から胎盤と胎児ができ、育っていく。
研究チームは受精卵が着床した人としなかった人の子宮の内側の壁の組織を比較し、働いている遺伝子について分析した。その結果、着床しなかった人は「EZH2」という酵素が大幅に少なかった。
この酵素は遺伝子をオフにするスイッチの役割を果たす。酵素がないと、細胞分裂に関わる特定の遺伝子の働きを抑えられず、子宮の壁の中で細胞が増え続ける。受精卵が壁にくっついた後、子宮の壁の中で本来は脱落するはずの細胞が増え続けるため、隙間ができず、受精卵が入り込めないようになっていた。
研究チームはマウスを使った実験でもEZH2の働きを調べた。通常のマウスは1回に7匹ほどを妊娠したが、EZH2をできなくしたマウスは2匹ほどしか妊娠しなかった。
研究成果は状態の良い受精卵が子宮に着床できずに不妊となる着床不全の検査方法や治療法の開発に役立つとみている。東京大学の広田泰准教授は「体外受精を何度やってもうまくいかず困っている人たちの原因の診断と治療につながる」と期待している。
引用元:
東大、受精卵着床しない原因の一端解明 不妊症治療に道(日本経済新聞)