「昔の病気」のイメージが強い性感染症「梅毒」の患者が近年、全国的に急増し、このうち妊婦の感染が年200人規模で報告されている。胎盤を介して胎児が感染するケースが九州でも相次いで確認されており、福岡市などでは対策が進んでいる。人の交流が盛んになる大型連休や年末年始後に患者が増える傾向があり、専門医は、不安を感じている人は検査を受けるよう注意を呼びかけている。(佐藤陽)

 梅毒の患者は、抗生物質による治療法の普及により、20世紀半ば以降、世界的に激減し、国内でも2000年代には1000人を割った。だが、10年ほど前から増え始め、17年に5000人、22年に1万3000人に達した。福岡県でも22年に569人(速報値)の患者が報告され、1969年の水準に戻っている。


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 福岡市・天神の「さぎやま泌尿器クリニック」の鷺山和幸院長(74)によると、梅毒の患者の多くは性風俗店に勤める女性や利用した男性だが、最近はSNSやマッチングアプリを通じて知り合った人と性交渉を持ち、体に異変を感じて来院する人もいるという。感染に気づかずに数年が経過すると、視力低下や歩行障害といった神経症状が表れることもある。

 深刻なのが妊婦の感染だ。国立感染症研究所によると、医療機関が保健所に届け出る項目に「妊娠の有無」が加わった2019年以降、全国で年200人程度の妊婦感染が報告されている。感染した妊婦の7割以上が無症状のため、妊婦健診で初めて感染に気づく人も多いとみられる。

 梅毒に感染した妊婦の報告数を女性人口100万人当たりで見ると、都道府県別では、20年は熊本県が7・6人で全国で2番目、21年は沖縄県が5・4人で5番目に多かった。

 胎盤を介して胎児が感染した場合、流産や死産のほか、「先天梅毒」による 水疱すいほう 性発疹、目や歯の異常が出る恐れがある。先天梅毒の乳児は19、20年にそれぞれ全国で約20人が報告され、このうち九州では、19年に宮崎県で2人、20年に福岡県で2人が確認された。

福岡市役所
 ただ、妊娠中の早い段階で適切な治療を受ければ、先天梅毒は予防できるという。行政は感染拡大や先天梅毒を防ぐために対策を強化し、福岡市や宮崎市の保健所などでは無料・匿名の血液検査を行っている。福岡県は約1年前から公式SNSで注意喚起を行い、福岡市や北九州市の主要駅にポスターを掲示するなどして啓発に取り組む。

 日本性感染症学会の副理事長を務める新小倉病院(北九州市小倉北区)副院長の浜砂良一医師(64)は「先天梅毒など次世代に影響が及ぶ可能性もあり、少しでも不安がある人は自治体が実施している検査を受けたり、医療機関を受診したりしてほしい」としている。

早期なら注射1回、治療受けやすく
 梅毒の治療法としてはこれまで服薬治療が中心だったが、国内でも注射薬が実用化され、治療を受けやすくなっている。

 日本では長く、ペニシリン系の抗菌薬を1日3回、4週間ほど服用する治療法が主流だったが、昨年1月、世界的な標準治療薬「ステルイズ」が使用可能になった。筋肉に注射するタイプで、感染から早期の場合は1回で済むため、患者の判断による服用中止や飲み忘れを防ぐことができる。

 一方、急性アレルギー反応「アナフィラキシー」を引き起こす恐れもあり、浜砂医師は「問診で既往歴を伝えるなどして、医師と治療法を決めることが大切」と指摘している。

◆ 梅毒 =「梅毒トレポネーマ」という細菌が主に性行為によって体内に侵入し、感染する。症状は性器や口内のしこりが典型例だが、数週間で症状が治まった後、無症状期間を経て発熱や全身の発疹など多様な症状が表れる。このため感染に気づきにくく、「偽装の達人」とも呼ばれる。

引用元:
「梅毒」流行止まらず、SNSで知り合った人と性交渉で異変…妊婦は流産や死産も(読売新聞オンライン)