責めるほど子どもは殻に閉じこもる
「言うことを聞かない」「信用してくれない」といった子どもに、どのような言葉がけやサポートをしているでしょうか。「なぜやらないんだ?」「なんでできなかったんだ?」などと責めて、さらに信頼関係を失ってはいませんか。
このように、言うことを聞かない子どもに、責め立てるようにしても逆効果です。
私はこれまでメンタルコーチとして、10000人以上の子どもたちと向き合い、脳科学と心理学に基づいたトレーニングによって多くの子のメンタルを改善してきました。
そして、その結果、甲子園で決勝進出、オリンピックで金メダル獲得など、さまざまな成果を残すことができています。
親や指導者は、子どもとの信頼関係を結ぶために、いくつか守っていただきたいことがあります。
間違った言葉がけをしないために、今回は、言うことを聞かない子にやってはいけない言動を3つのシチュエーション別にご紹介していきます。
また、どう言い換えればいいのか、どう接すればいいのか対処法もご紹介しています。
甲子園球児やオリンピックメダリストなどの若いアスリートの指導でも実際に用いている言葉がけです。とくに子どもを持つ親御さんや子どもに関わる先生・コーチの方は、ぜひ普段から実践してみてください。
責めるような言動と否定的な感情が記憶されてしまう
@ 「なんでできなかったんだ?」「なぜやらないんだ?」
相手が失敗してしまったときに、「責める」という行為は絶対に避けたいところです。とくに「なんでできなかったんだ?」「なぜやらないんだ?」このような言葉かけは、やめてほしいのです。これを私は「責め心」と呼んでいます。
実は「なぜ」という言葉の使い方が肝心です。目的を尋ねる際の「なぜ」はいいのですが、否定形の言葉と組み合わせると責めるような文章になってしまいます。理由を尋ねているつもりでも、相手は責められていると感じてしまうため、本当のことを言いづらくなってしまいます。
とくにミスをしたときなどは、「なんでできないんだ!」「なんでやらないんだ!」「お前はバカか!」などと強い口調で相手を責めることがあります。
人は責められると、「その場から逃げよう」という心理状態になります。言われた本人は「ごめんなさい」「次はちゃんとやります」と答えますが、その場しのぎで終わります。
しかも言われた言葉はまったくと言っていいほど頭に残っていません。残っているのは「怒られた」という感情と怒っている人の顔の表情だけです。
そして、その出来事と言っている人の表情、否定的な感情が一緒に脳に記憶されます。これが繰り返し行われることで、記憶が強化され、同じ場面になるとイメージのフラッシュバックが起きて身体がそのイメージのとおりに動こうとします。
つまり、本当は「できない」わけでも「バカ」でもないのです。記憶力がよすぎて過去の失敗やミスが忘れられないだけなのです。その結果、同じような場面になると、同じ失敗やミスを繰り返してしまうということにつながるのです。
場合によっては、「自分はダメな人間なんだ」と自分を責めるようになり、自分の殻に閉じこもってしまうこともあります。
指導する側の「責め心」は消し去りましょう。どうしても責め心が顔を出してきたら、あえて笑顔をつくる、背伸びをするなど、動作や表情を使って気持ちを切り替えてみましょう。
前向きな動作をすることで、脳がプラスの状況だと錯覚して、気持ちが落ち着いてくるのです。もしくは、口には出さず、心の中でつぶやくのもOKです。
ただし、満面の笑顔で。子どもには安心できる環境が重要なのです。
子どもを「信じる」こと
A 現状ではなく、「可能性」を信じる
子どもとの信頼関係をつくるためには、相手を信じることが大切です。相手を信じるから、相手からも信頼されるのです。
と、そう正論を言っても「子どものことを信じられない」というご意見もあるでしょう。そんなときは、このようにお答えします。
「目の前の、今の状態のその子を信じろというわけではなく、その子の“可能性”を信じてあげてほしい」
どんな人間でも、可能性のない人は1人もいないはずです。今はダメダメで、自信が持てず、やる気が見られないのかもしれません。
しかし、ずっとこのままだとは言い切れませんね。なぜなら可能性があるからです。だから「きっとできる」という気持ちで信じてあげてほしいのです。
心理学に「ピグマリオン効果」というものがあります。簡潔に説明すると、「人間は期待されたとおりの成果を出す傾向にある」ということです。
「この子には無理だ」という期待をかけていると、その子はできない子になります。「この子はきっと伸びる」と期待を持って接しているとその子は伸びるのです。
結局、どういうふうに思われているかを子どもは演じてくれるのです。
子どもに対する思いは、態度や表情に表れます。そして、親やコーチの表情や態度を子どもは敏感に感じ取り、口に出さなくても伝わってしまうのです。
例えば、テストの点数が悪かったと報告を受けたときに「なんだこの点数は!」という顔をすると、一瞬でばれます。
テストの点数が悪い、試合でいいプレーができなかったことに対して、あーだこーだと不満を言うのではなくて、「勉強頑張っていたことは知っているよ」「スポーツをやってくれるだけでうれしい」と伝えてあげる。
そもそも「期待する」ということは「期を待つ」ことです。そのとき〞を待つ姿勢が求められます。
コーチングがうまくいくかどうかのポイントも、実はここにあります。選手の指導も、子育ても同じです。親や指導者は、子どもの成長を信じて待つこと。親や指導者としての器や度量が問われているということですね。
あくまで期待を押し付けるのではなく、可能性を信じて、応援、サポートに徹すること。これが重要なのです。
アドバイスの前には相手の心の準備も必要
B 「違うんじゃない?」という否定のアドバイスをやめる
アドバイスを効果的にする方法をお伝えします。
アドバイスが必要だと感じる場面は、大概相手の言っていること、やっていることを否定したいときだと思います。
なのでどうしても、「違うんじゃない?」と否定から入ってしまうことがありますが、これは絶対に避けたいところです。
否定から入ると、相手の心のコップは下向きになってしまい、その後に何を伝えてもコップの中には入らず、ただ流されているだけ。つまり、その後のアドバイスはほとんど聞き入れられないと思ったほうがいいでしょう。
では、アドバイスする際にはどのようにしたらいいのでしょうか。ポイントをご紹介します。
まずは、前振りをすることです。「いま君の話を聞いていて、1つアドバイスがあるんだけどいいかな」と前振りをします。前振りをすることで、相手に心の準備ができます。心のコップが上向きになるのです。
そして、その後にアドバイスをすることで、コップの中に入っていきます。
次にIメッセージを使うことです。つまり、主語を「私」にすることです。もし主語を相手にして話すとどうなるでしょう。
「あなたはこうしたらいい」「あなたはこんなふうにやるといいよ」
いかがですか? 何か上から目線で評価されている感じがしませんか?
そこで「主語を自分」にして話すのをおすすめします。
「自分はこうしたらいいと思う」「自分だったらこんなふうにやる」
そして最後に確認を入れるともっといいでしょう。
「自分はこうしたらいいと思うんだけど、どうかな?」こうしてIメッセージを使い、最後に確認を入れることで、相手に寄り添ったアドバイスになります。
子どもは周りの人の影響を強く受ける
以上シンプルではありますが、「超メンタルコーチングBOOK」より厳選してご紹介させていただきました。
子どもは周りの人の影響を強く受けます。親や指導者のサポート次第で、いい方向にも悪い方向にも行ってしまいます。
「すごい才能があったのに、あの指導者によってつぶされた……」「悪い子じゃなかったのに、親の影響でグレてしまった……」よく聞く話ではないでしょうか。
親や指導者が子どもをよく見て、その場面によって適切な言葉がけをしなければいけません。
子どもと向き合い、変化に気づいてあげてください。過剰なサポートは禁物ですが、苦しそうならサポートしてあげてください。
そのために、ベストな言葉がけ、ベストなアプローチ法を身につけていきましょう。
子どもとあなた自身がともに成長していき、望む結果を得られることを心より祈念いたします。
引用元:
子どもに絶対言ってはいけない「逆効果ワード」(東洋経済オンライン)