英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院Medical Research Unit the GambiaのBeate Kampmann氏らは、妊婦にRSウイルス(RSV)ワクチンを接種することで、生まれた新生児や乳児期の下気道感染症を減らすことができるかを検討する第3相臨床試験MATISSEを行い、ワクチン群の乳児では、医療介入が必要な重度のRSV下気道感染症の発症率が低かったと報告した。ただし、あらゆる原因による、診療を要する下気道感染症の予防効果は示されなかった。結果は2023年4月3日のNEJM誌電子版に掲載された。

 RSVは、生後6カ月までの乳児の急性下気道感染症の原因として最も一般的で、主な死因の1つでもある。死亡リスクは、特に低-中所得国で高い。RSV関連の重症下気道感染症の発生率が最も高いのは、母親からの移行抗体が残っているはずの生後2〜3カ月の乳児であることから、妊婦に対するワクチンの接種は、生後すぐの新生児を感染症から守るために役立つと予想される。既に、破傷風、百日咳、SARS-CoV-2、インフルエンザの予防を目的として、妊婦に対するワクチン接種が試みられている。

 Pfizer社が新たに開発した2価ワクチンRSVpreFは、RSV A型とRSV B型由来の安定化した融合前F糖蛋白質を含んでいる。妊娠第2期の終わりから妊娠第3期に妊婦に接種することにより、生まれた子どもを生後数カ月間、RSV関連の重症下気道感染症から守ることが期待されている。

 先に行われた第2相臨床試験では、妊婦への接種の安全性と、誘導された中和抗体の新生児への移行が示されていた。また、60歳以上の人を対象にした第3相臨床試験RSV Vaccine Efficacy Study in Older Adults Immunized against RSV Disease(RENOIR)の中間解析で、RSVpreFワクチンの接種が、RSV関連の下気道感染症を予防することが報告されている。著者らは、妊婦へのRSVpreFワクチン接種の安全性と、乳児のRSV関連下気道感染症リスクを減らす効果について検討する第3相臨床試験Maternal Immunization Study for Safety and Efficacy(MATISSE)を実施することにした。

 RSV感染症は温帯地域では冬に、熱帯地域では雨期に流行する。MATISSEは18カ国が参加して、合計4回の流行期(北半球の国と南半球の国で各2回)にわたって実施される予定だ。この論文では、2020年6月〜10月にワクチン接種を受けた妊婦と生まれた児についての結果を報告している。

 対象は、年齢が49歳未満の健康な女性で、単胎妊娠であり、接種予定日が妊娠24〜36週の時期に当たり、妊娠合併症のリスク増加が見られない人とした。条件を満たした妊婦は1対1の割合で、RSVpreFワクチン120μg(A型とB型の抗原を各60μg)またはプラセボに割り付け、単回筋注した。

 有効性に関する主要評価項目は、生後90日、120日、150日、180日以内の、医療介入を必要とする重度のRSV関連下気道感染症、および治療を要する下気道感染症に設定した。ワクチンの有効性は、(1−相対リスク)×100で計算した。有効性の信頼区間の下限が20%超を統計学的達成基準とした。信頼区間の幅は、90日時点では99.5%、それ以降は97.58%とした。感染症がRSVによる疾患かどうかはRT-PCR検査を行って判定した。

 安全性の評価項目は、妊婦における反応原性と有害事象、および生まれた児の有害事象(早産、低出生体重、発達遅延などを含む)と新規診断の慢性症状とした。

引用元:
妊婦へのRSVワクチン接種で乳児の重症RSV下気道感染症が減少 ただし、あらゆる原因による、診療を要する下気(日経メディカル)道感染症の予防効果は認めず