神奈川県秦野市で分娩(ぶんべん)を扱う医療機関が3月からなくなっている問題で、市は24日、市有地に新たな産婦人科クリニックが開設されると発表した。11月の開業で1カ月に40〜50件程度の分娩を扱えるようになるという。

 新クリニックを運営するのは、医療法人葵鐘(きしょう)会(愛知県稲沢市)。愛知県を中心に約20の産科医療施設を運営している。市は鈴張町の市営住宅跡地の約2880平方メートルを20年間の定期借地権で賃貸し、施設の建設費など1億円を支援する。

 秦野市では2015年に秦野赤十字病院が分娩業務を取りやめ、その後、市内で唯一、分娩を扱ってきた別の産科も今年3月から扱いを休止。市内で出産ができなくなっていた。

 高橋昌和市長は「市民にとって8年越しの念願で、最重要課題だった。一日も早く、市民が安心して産み育てられる環境を整えたい」と期待を述べた。

 今回の連携協定は、市が分娩環境の整備に苦労していると知った葵鐘会が、21年秋に市に問い合わせたことがきっかけで交渉が始まったという。葵鐘会の山下守理事長は「産科は人口減少の局面で絶対に必要。産科がないと人口減少が加速する」と述べて、人口約16万人の秦野市でお産ができない状況は「地域医療の崩壊を意味する」と指摘。産科の空白を短くするため準備を急いだと説明した。

 「秦野名水」にちなんで、名称は「アクアベルクリニック」にし、病床13床で365日、24時間、対応するという。新クリニックで出産希望の妊婦には、開設前は市内のクリニックと連携して妊婦健診などを受けてもらう方針だ。

 協定では、宿泊型などの産後ケア事業、新生児などの発育・発達に伴うサポート事業、女性特有の健康課題などに関する事業など、周産期医療や女性と子どもの健康維持・増進を幅広く総合的にサポートすることなどを定めた。(豊平森)

引用元:
「秦野で出産」また可能に 市有地に分娩扱うクリニック、11月開設(朝日新聞)