石狩管内当別町に、親が育てられない乳幼児を匿名で預かる施設「ベビーボックス」(赤ちゃんポスト)を設けた公認心理師の女性が今年、道内外から乳児2人を受け入れていた。
昨年5月の開設以来初めてだ。女性は「行政支援からこぼれた親子の受け皿は必要」と説明する。 施設は病院と連携しておらず、安全性を危ぶむ声もある。ただ、赤ちゃんポストを法的に規制する仕組みはなく、女性は道の自粛要請に応じていない。
望まぬ妊娠をして、誰にも知られたくない女性やその子どもをどう支えるか。重大な問題だが国の姿勢は消極的で議論は進まない。
子の生命を守ることは最優先課題のはずだ。さまざまな事情を抱え出産し、育児が困難な親を救う体制作りを急ぐ必要がある。
熊本市の慈恵病院は2007年、国内初の赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」を開設した。乳児の遺棄を防ぐためだ。
匿名で受け入れており、子が出自を知る権利が失われる課題がある。自宅などでの孤立出産を経て預けられることが多く、安全とは言えない。育児放棄を助長するといった指摘も聞かれる。
それでも病院は施設の必要性を訴える。孤立出産の回避に向け、母親が一部職員を除き身元を明かさず院内で分娩(ぶんべん)できる「内密出産」も始め、模索を続けている。
一方、国は「妊婦が身元情報を明らかにして出産することが大原則」として赤ちゃんポスト、内密出産とも推奨していない。
国は昨年、内密出産に関する病院や自治体向け指針を公表した。病院は母親の情報を保存し、出生日など戸籍に必要な情報を児童相談所に提供する。ただこれは現行法の対応を示したに過ぎない。
国の主体性が感じられない。
望まぬ妊娠をし、父親にも見放され孤立する女性は後を絶たない。昨年、JR千歳駅構内に乳児を遺棄したとして母親が逮捕された事件も記憶に新しい。
ドイツは内密出産を法制化した。母親の情報は国が保管し子が将来、出自を知る権利を保障した。日本も妊婦救済と子の権利を両立させた法整備を急ぐべきだ。
2人の親は当初、行政機関に実名で相談していたが、支援につながらなかったという。行政は検証し、今後に生かす必要がある。
求められるのは誰もが安心して子を産み、育てられる社会だ。国や自治体は幅広い声に耳を傾け、実現に取り組んでもらいたい。
引用元:
赤ちゃんポスト 母子救済の体制強化を(北海道新聞デジタル)