福岡市は、2021年度から女性向けの『プレコンセプションケア推進事業』を始めました。卵子の数の目安を知る検査を500円で受けられるようにする事業です。事業の狙いなどを取材しました。
福岡市博多区の婦人科クリニック・蔵本ウイメンズクリニックです。この日、福岡市に住む大橋光莉さん(30)は、“ある検査”の結果を聞くために、クリニックにやってきました。
■蔵本ウイメンズクリニック院長・蔵本武志医師
「結果が出ました。非常にいい、たくさんあります。安心して、普通の生活を送ってください。」
■大橋光莉さん
「福岡市から500円で(検査を)受けられるクーポンが届いたので、やってみようと。」
大橋さんが受けたのは、血液を採取して、AMHと呼ばれる抗ミュラー管ホルモンの値を調べる検査です。
AMHを調べると、いま卵巣の中にある卵子の数が多いのか少ないのかの『目安』を知ることができます。
■蔵本医師
「これ(AMH)は卵巣の中に残っている卵子数を表す、卵巣予備能と関係しています。卵子数が多ければAMHが高く、卵子数が少なければAMHが低い。」
通常は自費で6000円から約1万円かかる検査ですが、福岡市は2021年度から、30歳になる女性の市民に検査費用が500円ですむクーポンを送るようにしました。AMH検査の費用に公的な補助を行っているのは、政令市では福岡市だけです。
■福岡市こども健全育成課・萱嶋愛課長
「その年度に30歳になる女性を対象に、クーポン券を配布していまして、クーポンを使って産婦人科の検診を受けてもらって、医師の説明を受けることで、自身の体の状況を知っていただくという事業です。」
その名は『プレコンセプションケア推進事業』です。プレ=前の、コンセプション=妊娠で、『妊娠前の健康管理』という意味です。
妊娠の計画があるかないかにかかわらず、適正な体重管理や、禁煙などを心がけることで、若い世代が、より健康になり、健全な出産のチャンスを増やすことが目的です。
『プレコンセプションケア』は、WHO=世界保健機関が2012年に提唱し、国も政策として進めています。
なぜ福岡市は『妊娠前の健康管理』として、卵子の数の『目安』を知る検査を勧めているのでしょうか。
卵子の数は、個人差が大きく、生まれてから年齢とともに減り続けます。37歳の時点で生まれた時の98パーセントの卵子が消失するといわれています。
新たにつくられることはないため、いざ妊娠を希望する時に、初めて卵子数が少ないことを知る不妊治療患者も多いといいます。不妊治療を専門とする蔵本武志医師に聞きました。
■蔵本医師
「極端に(AMH値が)低い人(は)、原因が分からない人もいるし、卵巣の手術をして卵巣を削ったような人、喫煙をしている人、そういった方は、通常の下がり方よりも、はるかに(卵子数が)減少してくる。将来子どもが欲しい時に、卵子数が激減してきます。」
蔵本ウイメンズクリニックでは、事業開始からの1年半で119人が検査を受けましたが、20人に1人の割合で、数値が極端に低い人がいました。
AMHの数値が低く、卵子の数が少ないからといって、必ずしも妊娠の可能性が低いわけではありません。
しかし、妊娠できる期間が限られてくることを意味するため、蔵本医師は、妊娠を将来的に希望する人には、妊娠するためのステップを早めるようアドバイスしています。
逆に数値が極端に高い場合、生理不順であれば、不妊の原因になる『多のう胞性卵巣症候群』が疑われ、将来的に子宮内膜ガンや糖尿病のリスクが高まるといいます。
■萱嶋課長
「ワンコインで検査を受けられる事業なので、ぜひ自分の体や健康・生活について考えるきっかけにしていただきたい。」
AMH検査を受けた大橋さんは、ことしから海外で仕事をすることになり、将来設計をする中で、福岡市のクーポンを手にしました。
■大橋さん
「自分がやりたいこと、行きたい場所を優先するうえで、リスクを知っておきたいと思ったのが一番大きいです。一安心できたので、自分のやりたいことを意識しつつ、将来は子どもも欲しいので、授かれたらいいなと思います。」
仕事・結婚・妊娠をどう設計していくのか。福岡市の事業は、ライフプランを考えるきっかけになりそうです。
『プレコンセプションケア』を推進する国立成育医療研究センターの荒田尚子さんは、「この検査をきっかけに、若い女性が婦人科の診療やカウンセリングを受けられることに大きな意味がある。福岡市と産婦人科医の連携が、うまく取れているのだろう。」と話していました。
福岡市が配布するクーポンは、その年度に30歳になる女性に6月末に郵送され、年度末の3月末まで500円で検査を受けられます。
紛失した場合でも再発行が可能ですので、福岡市のこども健全育成課(電話092-711-4065)までお問い合わせください。
引用元:
女性にやさしい『プレコンセプションケア推進事業』 狙いとは(FBS福岡放送)