双子や三つ子など多胎児育児に悩む親を支え、ノウハウを伝えようと、育児経験者らでつくるNPO法人「つなげる」(兵庫県尼崎市)が今月25日、市営住宅を活用したアットホームな支援拠点を開設する。代表理事の中原美智子さん(51)は双子育児の経験から、幼児2人同乗用三輪自転車「ふたごじてんしゃ」を考案した起業家。拠点では乳幼児の世話や母親の休息スペースを設けるなどして、経験者が親の孤独に寄り添い、手を差し伸べる。

双子を乗せられる「ふたごじてんしゃ」を考案した中原美智子さん。多胎児家庭支援の歩みを著書にまとめた=兵庫県尼崎市
双子を乗せられる「ふたごじてんしゃ」を考案した中原美智子さん。多胎児家庭支援の歩みを著書にまとめた=兵庫県尼崎市
双子用自転車考案
平成22年に39歳で男児の双子を出産した中原さん。7歳年上の長男を育ててきたが、双子の育児は想像以上に過酷だった。同時に抱っこや授乳をしてあげられずに、いつもどちらかが泣いている。「双子になった途端、当たり前の育児ができない。良くないお母さんなんじゃないかと孤独を感じた」と振り返る。

どこに行くにも2人分の荷物を準備して移動するまでが大変だったといい、ある日、双子と荷物を乗せたまま自転車ごと転倒するトラブルに見舞われた。


幼児2人同乗用自転車は、一般的に年齢差のあるきょうだいを乗せる目的で利用される。前と後ろにある幼児用座席は、体重・身長の安全基準が異なり、同じ体格の幼い双子を乗せるには不向きだった。

長男の育児の際は公園遊びや習い事の送迎に自転車を利用していた中原さんは、そのギャップに「双子に外出の機会を与えられない」と落胆した。

双子を安心して乗せられる自転車が欲しい−。メーカーにかけあい、交流サイト(SNS)で消費者の声を集めた。30年、7年がかりで「ふたごじてんしゃ」が製品化された。三輪で、後ろに子供用座席を前後に並べたのが特徴だ。「子供たちの世界が広がった」。同じように外出に悩む双子家庭の購入者からは、喜びの声が相次ぎ寄せられた。


悩み話せる場所を
ただ、それだけで多胎児育児の困難がすべて解決するわけではない。全国各地でふたごじてんしゃの試乗会を開くと、涙ながらに悩みや苦労を打ち明けてくれた母親に会った。

「なんで双子を産んじゃったんだろう」「子供をかわいいと思えない」


睡眠不足と思うようにいかない育児の疲れ、事故や虐待を恐れる気持ち。かつての自分と重なった。

日本では現在、約100人に1人が双子や三つ子などの多胎児を出産。人工授精などの不妊治療で多胎児が生まれやすくなるとされる。だが、行政の子育て支援や育児書は、単胎児を前提にした内容がほとんど。多胎児特有の悩みを共有できる場は多くない。

中原さんが30年に立ち上げたNPO法人は、これまで多胎児家庭が情報交換できるオンラインの「ふたごのひろば」を運営し、多胎児家庭の支援者養成などを手掛けてきた。

尼崎市に今月開設する常設拠点は市営住宅の3LDKで、普段の暮らしに近い環境で多胎育児の経験者らから支援やアドバイスを受けられる。沐浴(もくよく)や離乳食など乳幼児の世話を手伝ったり、子供の世話に追われて睡眠や食事をとれない母親が休息したりできるスペースも設ける。育児グッズメーカーなど企業の協力を得て、子供の誤飲や転落、けがを防止する安全対策を学べる場にしたい考えだ。



「話すことで自分の困り事が見えてくる。本音で話せる場所が必要」と、多胎児家庭のつながりの重要性を強調する中原さん。妊婦も、子供連れも気軽に立ち寄れる「ふたごの聖地」へ。多胎児育児の支援のモデルケースを目指す。(石川有紀)


引用元:
多胎児育児、悩む親に寄り添う 兵庫・尼崎に支援拠点(産経新聞)