途上国を中心に広がる薬剤耐性菌の感染症に対する新たな治療薬候補を探す国際臨床試験に、日本が参加することがわかった。国立国際医療研究センター(東京)と塩野義製薬(大阪)が、今春以降に世界10か国で実施される試験に参加・協力、同社製の抗菌薬を新生児に投与して治療効果を確かめる。新生児の命を救う治療の選択肢を増やし、世界的な課題である耐性菌の克服に貢献する。

 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や大腸菌などの耐性菌による感染症被害は、アフリカやアジアの途上国を中心に深刻だ。特に重症化しやすい新生児は、世界で年間21万人超の死者が出ているとする米英などの研究チームの推計もある。衛生環境が悪い病院内や自宅で感染し、効果的な治療がなされないまま、炎症反応で臓器が正常に機能しなくなる敗血症などで死亡するケースが多いという。


 世界保健機関(WHO)は2005年、敗血症の新生児向けの標準治療薬を指針で示した。だが、これらが効かない耐性菌が出現しているため、新たな治療薬を見つける必要が出てきた。

臨床試験は、WHOなどが設立し、日独英を含む世界20か国以上の政府が支援する国際研究機関「グローバル抗菌薬研究開発パートナーシップ( GARDPガードピー )」(本部・スイス)が主導する。対象は、家族の同意を得た敗血症の新生児約3000人を予定している。

 試験では、塩野義の抗菌薬「フロモキセフ」など候補となる既存薬3種を組み合わせて投与したり、従来の治療薬を使用したりして患者を治療。どの組み合わせの投与で炎症を抑えるなどの効果があったかを治療後に検証する。

フロモキセフは1988年に販売が始まった薬だが、事前調査で有効性が確認されたことが評価された。また、販売実績が日中韓や台湾に限られ、耐性菌が世界に広がっていない特長もある。塩野義はGARDPとの間で既に供給契約を結んでいるという。

臨床試験は、まず緊急性が高いアフリカから実施する。南アフリカやケニアで今春から開始し、適切な投与量などを確認する。有効性や安全性を確かめた後、2024年以降に対象国をアジアに拡大し、標準治療薬などと比べて死亡率が低下したかを約3年かけて調べる。症状の改善が確認できれば、WHOに標準治療薬の更新を要請する。


 国立国際医療研究センターは、アジア各国での試験の薬剤管理や治療の技術支援を担う。対象国は、フィリピンやインドネシアなどが候補になっている。

 小児感染症に詳しい久田研・順天堂大准教授は「以前は治療可能だった感染症も、耐性菌の出現や医療環境の影響で、治りにくくなっている。臨床試験は、現状を改善する重要な試みの一つで、日本を含む国際協力での支援が不可欠だ」と話す。

 ◆ 薬剤耐性菌 =薬に抵抗力を持つ細菌の総称。抗菌薬の過剰投与などが原因で発生し、これらの投薬では増殖が抑えられなくなる。結核菌などでは、複数の薬に耐性を持つものもあり、別の既存薬の転用などの対策が急務となっている。

引用元:
「薬剤耐性菌」で年間21万人の赤ちゃん死亡、新薬の国際研究に塩野義など日本勢参加(読売新聞オンライン)