◇珠洲市 来月導入
 地元に産科医がいない石川県珠洲市の妊婦が陣痛を感じ市内外の出産予定の病院などに向かう際、スムーズに救急車を使えるよう事前登録する制度「出産サポート119」が十二月一日に始まる。奥能登地方では、産科医確保が大きな課題となっており、市が安心して出産への準備をしてもらうために導入する。(上井啓太郎)
 市内では、二〇一九年十二月に市総合病院の産婦人科医が退職し、以降は市内で勤務する産婦人科医がいない。現在は第二子以降でリスクが低い場合に限って、この病院で助産師による出産を受け付けている。
 陣痛を感じたが、病院に行く手段がないなど、緊急時に救急車で病院に運ばれる例は二〇年から三件あった。ただ、一一九番しても「火事ですか、救急ですか」の質問から答えなければならず、既往歴や何人目の出産かも、陣痛の中で答える必要があった。
 市内で救急車で搬送される場合、救急指定病院の輪島市立輪島病院にまず運ばれてしまい、普段、診察してもらっている医師が勤める医療機関に搬送されない場合もあった。
 県が産科医不足解消のため設けた「赤ちゃん協議会」の配布資料を見た珠洲市幹部が同様の仕組みを取り入れている兵庫県丹波篠山市の例が紹介されているのを見つけ、十月から珠洲市でも導入できないか検討開始。珠洲消防署とも協議を重ね、十二月の制度開始にこぎ着けた。
 妊婦を支える市健康増進センターを妊婦が訪れて用紙に記入すると、情報が消防でも共有される。妊婦は登録者カードをもらい、母子健康手帳に証明シールを貼る。一一九番の際は、かかりつけの医師が必要と判断すると、救急隊が指示に従って病院に搬送する。
 市内の年間出産数はここ数年五十件ほど。市は新制度について、年間数例の利用を見込む。担当する保健師の大谷内香奈さん(31)は「里帰り出産の方にも使ってもらえる。この制度を使ってもらい、より安心して出産への準備をしてもらえれば」と話す。珠洲消防署の次社(じしゃ)勝敏署長も「苦しい中で、電話で説明しなくても良くなる。事前に情報が入っていれば、よりスムーズに搬送できると思う」と効果に期待した。

引用元:
【石川】妊婦の情報 救急も共有 産科医不在 素早く搬送へ(中日新聞)