性感染症の「梅毒」であると今年診断された人が1万人を超えました。こうした中、懸念されるのが母親の胎盤を通じて胎児に感染する「先天梅毒」です。妊婦が分からないうちに感染してしまうことも少なくないといい、注意が必要です。(山口千尋)
体に赤い発疹、心臓や血管、脳に障害が起きることも
梅毒は、「梅毒トレポネーマ」という細菌が原因で発症します。主に性的な接触によって、性器や口、肛門の粘膜や皮膚の傷口から体内に菌が侵入します。症状は、性器や口内にしこりができたり、太ももの付け根のリンパ節が腫れたりします。また、体に赤い発疹ができ、何年もたってから心臓や血管、脳に障害が起きることもあります。
国立感染症研究所によると、11月1日時点で報告された梅毒患者数は1万141人です。昨年の7983人を大きく上回り、現在の調査方法となった1999年以降、初めて1万人を超えました。
心当たりはなく、知らない間に感染
梅毒に感染した女性の7割5分は20〜30歳代です。感染者の中には、妊婦もいます。日本性感染症学会理事で日本大学産婦人科主任教授の川名敬さんは「診察していて、梅毒にかかった妊婦が増えてきている」と言います。
川名さんによると、感染した妊婦のうち4分の3は妊婦健診で見つかっています。本人に心当たりがなく、知らない間に感染しているケースが多いといいます。残りの4分の1は、妊婦健診を受けていなかったり、受けていても不定期だったりする人です。
先天梅毒とは
梅毒は胎盤を通じて胎児に感染し、死産になることもあります。生まれてきた場合は新生児の「梅毒抗体検査」で感染の有無が分かります。感染していると、体重が増えなかったり、生まれつきの異常が出たりします。ただ、無症状のこともあります。感染した赤ちゃんには抗生剤を投与して治療しますが、既に発症していると目、耳、精神発達に後遺症が残ってしまうことがあります。
川名さんは「2012年以前は全国で年間2〜3人だった先天梅毒の新生児の数が、ここ2〜3年は20人ほどと異常に高い数値で高止まりしている状況です」と指摘します。
母親の感染が分かったらすぐ治療を
梅毒の治療には、一般的にペニシリン系の抗菌薬を4週間ほど投与します。妊婦の場合も同じです。川名さんは「妊婦健診で気づいてすぐ治療した場合、母親の胎盤を通じて胎児に感染する『先天梅毒』は14%とされ、未治療の場合はその割合が高まります。妊婦が梅毒にかかってから日が浅い場合は、母子感染の確率が下がると考えられており、早期の検査や治療は非常に重要です」と指摘します。
「感染したかも」と思ったらすぐに検査を
梅毒の検査は無料で、保健所で受けることができます。少しでも疑わしい症状(性器のしこり、潰瘍、全身の発疹など)があるなら、すぐに検査を受けることが大切です。
かわな・けい
日本性感染症学会理事、日本大学産婦人科主任教授
引用元:
妊娠中に梅毒 治療しても14%は「先天梅毒」になるおそれ…年間感染者初の1万人超え(ヨミドクター)