スマートフォンなどのデジタル端末画面を顔に近づけて長時間使うことで、黒目が内側に寄ったまま戻らなくなる「急性内斜視」の危険性が指摘されている。教育現場では全ての子どもにデジタル端末を配備する「GIGAスクール構想」が進む一方、子どもの視力は低下傾向だ。専門家は機器の適切な利用を呼びかける。 (梅本邦明)
数年前、北九州市門司区の大里眼科クリニックを受診した高1の少年は、その半年以上前から物が二重に見える症状に苦しんでいた。辰巳貞子医師が診察したところ、左目の黒目が常に内側に寄っている。少年はスマホを毎日5〜6時間利用していた。典型的な急性内斜視だった。
辰巳さんは少年に、スマホの利用を1日30分以内に抑えた上で、利用する際は大きなテレビ画面に接続して映し出すよう指導。さらに内斜視を矯正するプリズム眼鏡を半年余り着用させた。だが症状は改善せず、眼球を動かす筋肉の力を弱める手術を施したという。
辰巳さんによると、同院を受診する急性内斜視の患者が増えたのはここ10年ほど。特に小学生から10代が多い。「スマホなどの過剰利用と関連があると考えられる」という。
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福岡市立こども病院眼科科長の後藤美和子医師によると、近くの物を見ようとすると両目が内側に寄るが、それが長時間続くと、どちらかの目が内側に寄ったまま固定されることがある。急性内斜視だ。
日本弱視斜視学会の佐藤美保理事長(浜松医科大病院教授)はその原因として、ストレスの影響や、目の別の病気なども考えられると指摘。近年、若者に増えている症状も「複数の要因が重なっている可能性がある」として同学会が症例を調査中だ。
内閣府が昨年度、全国の10〜17歳を対象に行ったインターネット利用に関する調査(3395人回答)によると、97・7%がネットを利用していると回答。1日の利用時間は平均4時間23分余りと前年度より1時間近く伸びた。利用機器はスマホが68・8%だった。
一方、文部科学省は昨年度、初めて全国の小中学校29校(約8600人)を抽出して近視の実態調査を実施。裸眼視力「1・0」以上の割合は小1の79%に対し、中3は38%。「0・3」未満は小1が1%に対し、中3は30%だった。
子どもは大人に比べて腕が短く、端末画面を顔に近づけがちだ。佐藤さんは内斜視の予防策として画面と目の距離を30センチ以上離し、30分見たら遠くを見て目を休ませることを勧める。「スマホの普及で目の使い方は変化した。異変に気付いたら眼科医に相談してほしい」
イヤホンで大音量 「騒音性難聴」も 内耳の有毛細胞を破損
スマホなどデジタル携帯端末の過剰利用は聴覚にも異変をもたらす。イヤホンなどで大きな音を聞き続けることによる「騒音性難聴」の危険性が指摘されているのだ。
「イヤホン難聴」とも呼ばれるこの症状は内耳にある有毛細胞の損傷によって起きる。音は空気の振動として耳の奥に伝わり、有毛細胞によって電気信号に変換されて脳に伝達される。大音量の強い振動が続くと有毛細胞は徐々に破損され、いったん壊れると再生せず、耳鳴りがしたりする。これが騒音性難聴だ。
もともとは音楽家や工場労働者など大きな音に長時間さらされる職業に多く見られたが、2010年代以降、世界的に携帯機器の利用と難聴の関連が指摘され、世界保健機関(WHO)は19年、携帯機器の聴力への悪影響を警告した。
九州大医学部耳鼻咽喉科の松本希准教授によると、治療には有毛細胞の炎症を抑える投薬を行う。治療開始が早いほど効果は高いが、発症初期は高音域が聞こえづらくなることが多く「通常の会話には困らないため自覚しにくい」という。
最大の予防法は音量を下げること。WHOは安全の目安として、80デシベル(地下鉄車内と同じ程度)の音量を聞く限度を1週間に40時間までとした。大音量を聞いた後は意図的に耳を休ませることが大切だ。周囲の雑音を低減する機能「ノイズキャンセリング」があるイヤホンを使えば音量を比較的抑えることができる。
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引用元:
物が二重に…子に増加「急性内斜視」の危険性(西日本新聞)