第7波でも直面、コロナと産科医療の厳しさ
コロナの第7波がいまだ高止まっている。
SNSには、妊婦さんたちの不安の声も数多く上がっている。

「昨日から発熱。コロナに罹患した妊婦さんを受けられる病床残ってない、と言われてどしていいかわからない」

「付き添い通院も出産もできず、産後の面会もできない。コロナ禍で大変なのは承知で妊娠を決意したけど、あまりに孤独すぎるし、感染拡大で不安」

「このまま高熱が続いたら、帝王切開の可能性も、と言われ混乱しています」
平常時でも「これは大丈夫?」「もしも何かあったら」と妊娠中はちょっとしたことでも不安になりがちだ。それなのに、コロナ禍では感染の不安、そして上のコメントでもあるが、通院も出産も産後も家族の立ち合いはない。本来は喜びに満ち溢れるべき妊娠、出産であるはずなのに……。

そんな厳しいコロナ禍の産科医療の現場をリアルに伝えているのが、あの人気漫画『コウノドリ』の「新型コロナウイルス編」だ。
医療従事者にとっても緊急事態だった
『コウノドリ』は2020年5月7日に7年間、328話もの命の物語を綴り、惜しまれながら幕を閉じた。連載が終了した時期は、新型コロナの第1波が拡大の頃だった。連載終了間際に発生したパンデミック。

しかし、連載終了当時は、「新型コロナウイルス編」を書くつもりはなかったと漫画家の鈴ノ木ユウさん。連載完結後も『コウノドリ』の取材でお世話になった医療者の方々と連絡を取っていた鈴ノ木さんだったが、その中で現場の厳しい様子が見てきたという。

「昨年の秋ぐらいでしょうか、第4波が落ち着いてきたころに、それまでできなかったお医者さんとのやりとりが、ようやくできるようになってコロナ禍の医療現場についても詳しくお話を伺いました。その中で、『ぜひ協力したい』とおっしゃってくださったので、『これはもう描かなきゃ』と、気持ちが動かされました。

新型コロナウイルスは、罹患する人だけでなく、医療側にとってもこれまで経験したことのないものです。その部分に視点を当てて『新型コロナウイルス編』を描くことに決めました」(鈴ノ木さん)

『新型コロナウイルス編』では、聖ペルソナ総合医療センターの鴻鳥サクラら周産期医療のチームに加え、感染症内科のドクターも大きな役割として登場する。

「取材先で感染症内科の先生にお会いしてお話を伺って、医師たちが『思っていた場所と違うところで戦うことになった』と感じている、と。これを一番に思いました。いつもは、出産する患者さんを診るわけではない医師が、お産の現場や救命や患者さんの生き死にに直接かかわらなければいけない。そんな医師たちも体験したことがない、緊急事態である状況を描きたかったのです。

そんなこともあって、『新型コロナウイルス編』では、その感染症内科の先生(牧先生)を核の人物として描きました。治療の現場だけでなく、エピソードには、彼の家族の話などの周囲のお話もしっかり描きました。医療だけでなく、そういったものも巻き込んでいるのがコロナだと思ったので」(鈴ノ木さん)
医療崩壊寸前の中でコロナに向き合っている医療従事者たちはもちろん、その家族にも苦しみがあることを知ったという。鈴ノ木さんは、今回その部分をとても丁寧に描いている。

「『新型コロナウイルス編』では、まずは医療者の皆さんが読んで元気になる漫画を目指して描きました。ですが、パンデミックとは関係なく、子どもが生まれることの喜びを大切に描いている点は、これまでと変わりありません。

そして、コロナ編を公開してから予想以上の反響をいただけたからこそ、最終回の鴻鳥先生のシーンが頭に浮かびました。読者の皆さんのおかげで描けたそのシーンも、ぜひ読んでいただければと思います」(鈴ノ木さん)

パンデミックが起きてから2年半。なかなか収束しない状況にいら立ちも募る。「もういい加減にしてくれ」と誰もが思うはずだ。でも、医療はそこでくさったりあきらめはできない。どうにかして治療につなげないかと奮闘している人たちがいる。ネタバレになってしまうので、『新型コロナウイルス編』のラストに関してはお伝えできないが、鴻鳥サクラらしい希望を感じられるはずだ。

引用元:
『コウノドリ』著者「描かないと思ってた」コロナ禍の出産現場を描くと決めた理由(現代ビジネス)