クローン技術が飛躍的に進歩しそうだ。山梨大学の研究グループは7月6日、フリーズドライ(凍結乾燥)した体細胞からクローンマウスの作出に成功したと発表した。これにより、これまでよりも遥かに多くの遺伝資源を残せる可能性が広がった。
https://www.yamanashi.ac.jp/wp-content/uploads/2022/06/20220630pr.pdf
今回の研究は、保存する細胞とその保存方法という2つの技術で大きな進歩を遂げた。
これまで、クローンを作るためには、精子や卵子の保存が必要で、その保存は液体窒素による保存が中心だった。
ところが、液体窒素の保存ではコストが高い上に、不測の事態により液体窒素の供給が止まると利用できなくなる。
植物では米マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツらが出資して、永久凍土の地下に世界中の種子を保存する「スバールバル種子貯蔵庫」という取り組みが行われている。
これは、永久凍土の地下で世界中の種子を貯蔵することで、たとえ大規模災害が起き電力供給が止まっても半永久的に、種子の保存を可能にした施設。
だが、温暖化により永久凍土が溶け、絶対に安全とされてきたスバールバル種子貯蔵庫が洪水被害に遭った。
発表によると、保存方法について研究グループは、液体窒素を使わずに精子を保存するフリーズドライ化技術の開発を20年以上行っている。
哺乳類の細胞や精子はフリーズドライするとすべて死んでしまうが、研究グループは 1998年に世界で初めて、フリーズドライにして保存した精子から健康な産仔を作ることに成功した。
この技術によって、それまで液体窒素がなければ保存できなかった精子が、室温でも保存できるようになった。
その後も、フリーズドライ精子を机の引き出しの中で1年以上の保存や、フリーズドライ精子をハガキに張り付けて普通郵便で送ることにも成功している。さらには、国際宇宙ステーションで約6年間保存したフリーズドライ精子から仔マウスを作り出すことにも成功した。
次に保存する細胞の問題だが、そもそも精子は幼弱や高齢、あるいは不妊のオスから採取できない。また、メスから卵子を採取すること非常に困難だ。
そこで研究グループは核移植技術を用いれば体細胞からでもクローンを作れることから、性別や年齢、健康状態に関係なく採取可能な体細胞に着目した。
哺乳類初の体細胞クローン動物は、1997年に英スコットランドの研究所で作られた羊の「ドリー」だが、研究グループは1998年に世界で初めて、小型実験動物であるマウスで体細胞クローンマウスの作出に成功している。
cyzo日刊サイゾー2022.07.19
さらに、生きた細胞からしか生まれていなかったクローン動物だが、研究グループは世界で初めて、マイナス30℃の冷凍庫で16年間凍った状態で保存されていたマウスの凍結死体からクローンマウスを作ることに成功した。
また、マウスの尿から細胞を回収し、クローンマウスを作り出すことにも初めて成功している。
問題は液体窒素に替わるフリーズドライという保存方法と、精子以外の体細胞の保存という技術をある程度確立しながら、フリーズドライ化した体細胞からクローン動物を作ることは出来ないことにあった。
体細胞の室温保存も実現可能…?
そこで研究グループは、凍結乾燥保護剤や乾燥方法を改良し、さらに新たに開発した連続核移植技術を組み合わせることで、フリーズドライ化して最長で9カ月間保存した体細胞からクローンマウスを作ることに世界で初めて成功した。クローンマウスはすべて正常な繁殖能力を持っていた。
これは遺伝資源をどんな個体からでも回収でき、液体窒素を使わないため安全かつ低コストで保存できるため、遺伝資源保存方法の決定打となる可能性がある。
研究グループでは、「今回開発された技術により、将来的には乾燥保存されているニホンオオカミやニホンカワウソなどの毛皮からクローンを作り出せるかもしれない。また、オスしか生き残っていない絶滅危惧種からメスを作り出すことも可能になるかもしれない」としている。
今回の実験では、フリーズドライ体細胞を液体窒素は使わずにマイナス30℃の冷凍庫で保存したが、「体細胞の室温保存も実現可能」と考えており今後、技術開発を進めていく。
研究結果は7月6日、Nature communicationsにオンライン掲載された。
引用元:
「山梨大研究G」クローン技術画期的な進歩!フリーズドライ細胞からクローンマウス(日刊サイゾー)