年間約1万1千人の女性が罹患(りかん)し約2900人が亡くなりながら、ワクチン接種が進んでいない子宮頸がん。関西医科大(大阪府枚方市)は「光線力学的療法(PDT)」を応用し、子宮頸がんを前がん状態の段階で切除せずに治療する実用化研究を進めようと、クラウドファンディングで準備資金を募っている。同大産科学・婦人科学講座の北正人教授は「国の方針でワクチン接種の機会を逸した世代、前がん状態と診断され治療方針に悩む女性のため、一刻も早く治療法として確立したい」と話している。

ワクチン未接種世代

子宮頸がんは子宮がんの約7割を占め、20〜30代の若い女性に増えている。性的接触によるHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が大きな原因とされ、この約20年間は患者数も死亡率も増加傾向だ。

世界保健機関(WHO)は感染予防のためHPVワクチンの接種を勧奨しており、米国や英国、フランス、ドイツなどでは公的接種が進んでいる。

国内では平成25年4月に12〜16歳を対象とした定期接種をスタートさせたが、疼(とう)痛などの身体症状や安全性を疑問視する報道が相次いだため、厚生労働省はわずか2カ月で定期接種の積極的勧奨を差し控えると発表。

今年4月、安全性などに関する情報提供と救済制度を整え、積極的勧奨を再開したが、約9年間の空白期間≠ェでき、未接種世代が生まれている。

リスク伴う部分切除治療

HPVは感染しても多くの場合、ウイルスが自然に排除される。だが、ごく一部のケースで数年から十数年間かけて前がん状態を経て子宮頸がんを発症し、子宮を失うケースもある。

前がん状態で発見された場合は経過観察、がんに進行した場合は子宮頚部の部分切除が治療の中心となるが、早産や不妊、再発のリスクを伴う。このため、前がん状態と診断された人たちの不安も大きいという。

北教授が研究するPDTは、検診などで発見された前がん状態の治療に有効。がん細胞に集まり光に反応する薬剤を腫瘍部に塗布したうえ、特定の波長の光を照射し、がん細胞だけが細胞死するよう誘導する治療法だ。

予備的研究では細胞診断で80%、生検診断で40%、ウイルス検査で80%が陰性化したという。

また、シリコン製の膣内バルンアプリケーターと呼ばれる医療機器も開発しており、治療時の痛みや時間など患者の負担軽減を目指すという。
目標資金は1千万円

北教授は「前がん状態に対する有望な治療法。日帰り治療が可能で患者さんにも優しい」と自信を持つ。一方、子宮頸がんはワクチン接種による予防が世界的な流れとなっており、治療の実用化研究に向けた企業の協力が得られにくい状況にある。

このため、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)から公的資金を獲得して実用化研究を進めことを目的に、その事前準備資金として寄付を募ることにした。クラウドファンディングはサービス運営会社「レディーフォー」のウェブサイトで8月31日まで1千万円を目標にして受け付けている。

今年度中にAMEDへの応募、令和6年から臨床試験、12年に医薬品・医療機器の承認申請を行う青写真を描いている。

北教授は「子宮頸がんはワクチン接種で予防し、検診で早期発見すれば切らずに治療できることを広く知っていただき、実用化に向けたハードルを越えるため、みなさんの支援をお願いしたい」と話している。(守田順一)


引用元:
切らずに治す子宮頸がん 実用化研究へネット資金調達(産経新聞)