通常酸素療法では追い付かず、非侵襲性換気(NPPV)が導入される前段階として使われるのが高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)です。現場では商品名であるネーザルハイフローと呼ばれていることが多いと思います。
全身麻酔下で気管挿管を行う手技中にHFNCを“かませて”、挿管時の酸素飽和度低下を予防するという戦略は妥当だと思われますが、新生児においてはどうでしょうか。
今回紹介するのはNew England Journal of Medicineに掲載された、「新生児の気管挿管時のネーザルハイフロー治療(Nasal High-Flow Therapy during Neonatal Endotracheal Intubation)」(Hodgson K, et al. N Engl J Med. 2022 Apr 28;386(17):1627-37.)です。
新生児の気管挿管はむちゃくちゃ難しく、私も小児科をローテートしているときに何度か見たことがあるくらいですが、「何だコレ」というくらい繊細なテクニックが問われます。点滴ルートすらまともに入らないこともあるので、新生児科医は神だと思っています。
これはオーストラリアにおける2つのNICUで気管挿管を受ける新生児を対象に行われた、「HFNCを“かませる”戦略」と「標準ケア」を比較したランダム化比較試験です。
プライマリアウトカムは、新生児における生理的不安定性(酸素飽和度のベースラインからの20%以上の低下、あるいは心拍数100回/分未満の徐脈と定義)のない初回気管挿管の成功と設定されました。
ITT(intention to treat)解析で、202人の新生児に対する251回の気管挿管が対象となりました。124回がHFNC群に、127回が標準ケア群に割り当てられました。挿管時の新生児の出生週数中央値は、HFNC群で27.0週(四分位範囲[IQR] 25.0-31.0)、標準ケア群で27.0週(IQR 25.1-28.9)、体重の中央値はそれぞれ893g(IQR 682-1492)、841g(IQR 670-1162)でした。出生5分時点でのApgarスコア中央値はそれぞれ8点(IQR 6-9)、7.5点(IQR 6-9)でした。術者の経験も大事かと思いますが、いずれも半分以上が20症例以上の気管挿管を経験した医師が担当していました。
生理的不安定性のない初回気管挿管成功率は、HFNC群で124例中62例(50.0%)、標準ケア群では127例中40例(31.5%)でした(調整リスク差17.6ポイント、95%信頼区間6.0-29.2)。治療必要数(NNT)は6(95%信頼区間4-17)でした。これはもう「HFNCを一緒に行わないとアカン」というレベルで差が付いていますね。
生理的不安定性の有無を問わない初回気管挿管成功率は、HFNC群で68.5%、標準ケア群で54.3%でした(調整リスク差15.8ポイント、95%信頼区間4.3-27.3)。
新生児や早産児における非侵襲的な呼吸管理では、経鼻的CPAPのエビデンスが極めて多いのですが、この代替としてHFNCを選択することで、治療失敗・再挿管・死亡・気胸・気管支肺異形成のリスクを上昇させずに、鼻の損傷を減少させるというメリットがあることが示されています1)。
成人と同じく、新生児においてもHFNCによるメリットの方がデメリットを上回るシーンが多く、気管挿管時もその一つだといえそうです。
(参考文献)
1) Wilkinson D, et al. High flow nasal cannula for respiratory support in preterm infants. Cochrane Database Syst Rev. 2016 Feb 22;2:CD006405.
引用元:
新生児の気管挿管時にはネーザルハイフローを倉原優(近畿中央呼吸器センター)(日経メディカル)