近畿大学(近大)は5月30日、日本人女性を対象に、月経前症候群(PMS)と腸内フローラ(腸内細菌叢とも)の関連性を研究し、抗うつ作用への関与が期待できる「酪酸産生菌」や、脳内神経伝達物質を産み出す「GABA産生菌」が減少していることを確認したと発表した。
同成果は、近大 東洋医学研究所の武田卓所長らの研究チームによるもの。詳細は、米オンライン科学誌「PLOS ONE」に掲載された。
PMSは、月経前に3〜10日において、イライラや落ち込み、不安感といった精神症状と、腹部膨満感・乳房症状といった身体症状を特徴とする。女性のパフォーマンスを妨げることから、女性の活躍促進が求められる現在、注目されるようになっている。
しかし、標準治療である「低用量ピル」や抗うつ薬である「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」が、一般的にあまり受け入れられていない現状もあり、十分な治療が行われていない。そのため、簡便で身体への負担が少ない治療法の開発が期待される状況となっている。
一方、腸内フローラは近年、さまざまな疾患との関連性が研究対象となっており、個数で100兆から1000兆、種類数では約1000種類といわれる多種多様な腸内細菌は、ヒトの疾患や体調などに関与しているとされ、新たな治療ターゲット候補として研究が進められている。
また、PMSはうつ病と多くの共通点が見られるため、うつ病などの精神疾患の分野において脳との関連性も注目されるようになってきているものの、その詳細な原因は明らかでなく、PMS患者における腸内フローラの検討はこれまで実施されていなかったという。
そこで研究チームは今回、PMS患者における腸内フローラの特徴を明らかにするため、中等度以上のPMS患者とPMS症状の自覚がない健常者を対象に調査を実施することにしたという。
研究の時期は2019年9月から2020年8月までで、対象は、重度なPMS症状による社会生活障害を自覚して産婦人科クリニックを受診した21名(PMDs群)と、中等度以上のPMS症状の自覚がなく健診などで受診した健常者22名(C群)。PMS症状は、PMSの重症度を調べる評価票「premenstrual symptoms questionnaire(PSQ)」を用いて評価が行われたほか、便検体を用いて次世代シーケンスメタゲノム解析を実施し、腸内フローラが解析されたところ、「(1)PMS患者と健常者は異なる腸内フローラを示す」、「(2)いくつかの腸内細菌が、PMS患者と健常者において、特徴的な分布を示す」、「(3)PMS症状の重症度といくつかの腸内細菌との相関性が認められた」、「(4)これらの特徴は、これまでのうつ病患者での報告とは異なるものである」といった4点が明らかとなったという。
今回の検討でPMSとの関連性が示唆された腸内細菌には、抗うつ作用が期待できる酪酸産生菌や、PMSの病態生理にも関連するとされる脳内神経伝達物質を産み出すGABA産生菌などがあるという。PMS患者ではこれらの腸内細菌の減少が認められており、腸内細菌とPMS発症の関連性が推測されるとする。
なお研究チームでは、今回の研究をきっかけとして、今後、PMS診断マーカーの開発や、食事療法、プロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌)、プレバイオティクス(善玉菌のエサとなるオリゴ糖類や食物繊維類などの食品成分)といった、簡便で身体への負担が少ない治療法の開発が期待されるとしている。
引用元:
PMS患者では腸内の酪酸産生菌やGABA産生菌が減少している、近大が確認( マピオン)