双子や三つ子などの「多胎児」を育てる親への支援が課題となっている。未熟児で生まれる割合が高く、育児負担が大きいとして、国は支援事業を行う自治体への費用補助に乗り出したが、十分に広がっていない。自治体単位では対象となる家庭が少なく、支援策が事業化されにくいためとみられ、専門家は自治体同士が連携した取り組みを提案するが、周囲の手助けも不可欠だ。(猪原章)


虐待リスク
 厚生労働省の人口動態統計などによると、全 分娩ぶんべん 件数は近年、年90万件前後で推移。うち多胎児は約1%の1万件前後で、2500グラム未満の未熟児として生まれる割合が約7割に上る。

 自身も双子を育てた日本多胎支援協会(神戸市)理事の 天羽てんば 千恵子さんは「多くの多胎児の親は本当に一生懸命だ」と話す。

 多い時には1人につき1日10回の授乳が必要で、オムツ替えも1人20回ほど。もく浴などもあり、「まとめて2時間寝ることさえ難しい」という。天羽さんは「夫や祖父母の手助けは不可欠だが、協力を得られないケースもある。家族以外に頼ることに負い目を感じる母親は多いが、行政や民間のサービスも積極的に活用してほしい」と語る。

 未熟児が多いことも多胎育児の困難さの一つだ。みずほ情報総研などによると、未熟児は母乳を飲む力が弱いなど手がかかり、負担が大きくなりがちだ。疲れが蓄積すると精神的に追い込まれやすくなり、虐待リスクも高まる。虐待を受けた子どもの4割超が未熟児だったとの調査結果もあり、新生児に占める未熟児の割合が1割弱ということを考えると、相当な高率になる。

 日本多胎支援協会の2017年度の調査では、03〜16年に虐待で死亡した多胎児は17人。虐待死リスクは1人の場合の2・5〜4倍になるという。

 乳児だった双子の長女を床に打ちつけ、脚を骨折させたとして、傷害罪に問われた母親(22)は高松地裁丸亀支部の法廷で、「ギリギリの状態でした」と育児中の心境を語った。長女は約450グラムの未熟児として出生。母親は事件後、育児ストレスによる「不安状態」と診断された。

無料でもく浴介助
 育児負担の大きさから虐待につながらないよう、国は多胎育児に着目した支援を始めた。厚労省は20年度から、支援事業を行う自治体に対し、費用の半額を補助し、1年間で延べ59自治体から申請があった。

 大阪府高槻市は、多胎児を妊娠・育児中の母親宅への訪問事業を実施。支援員が、出産前は最大5回、出産後2年間で40回、無料で相談やもく浴の介助に応じる。20年度には6世帯が利用した。兵庫県宝塚市では、1歳半までの健診の際、多胎育児の経験者に無料で相談することができる。

 大阪公立大の横山美江教授(公衆衛生看護学)は「手がかかる乳児期の死亡例が多く、妊娠中からサポート役に引き合わせるなど早い段階からの支援が必要だ。出産前から自治体が支援を主導し、多胎育児の専門知識を持つ保健師による出産後の家庭訪問も有効。複数の自治体が保健所などと協力して支援にあたるのも効果的だろう」と指摘する。

引用元:
育児負担重い「多胎児」の親への支援が課題、国補助に乗り出すも自治体申請進まず(読売新聞)