不妊治療に対する支援が4月、国の助成から公的医療保険の適用に切り替わることで、患者の選択によっては逆に負担額が大幅に増える恐れが出ている。保険診療と併用できる「先進医療」に含まれない治療法を選べば、保険適用が認められない「混合診療」となり、全額自費となるためだ。中国地方では鳥取県が助成制度を新設してカバーするが、対応しない自治体もある。医療機関から「患者の選択肢を奪い、技術開発も停滞する」と懸念の声も出ている。
体外受精を行うミオ・ファティリティ・クリニック(米子市)は2020年、受精卵の透明帯を除去して妊娠の確率を高める世界初の治療法を確立した。21年末までの2年間、良好胚が得られず妊娠が困難だった平均40・3歳の161人に実施し、58人が妊娠した。
しかし、最新の治療法は症例が少なく、十分な根拠が得られるまで当面は「先進医療」に加えられない見通しだ。選択すれば全治療が保険適用から外れる。見尾保幸院長は「卵などの条件が厳しい患者が多く、現場は工夫しながら悪戦苦闘している。有力な方法が使えないなら、希望を持つ人たちにあきらめろと言っているのと同じ」と訴える。
鳥取県によると、体外受精の費用は「採卵から移植まで50万円近く、オプションでさらに数万円から数十万円が必要」という。国は都道府県などと折半で1回30万円まで助成している。4月からは保険適用され、体外受精や顕微授精などの基本的な治療の自己負担額が3割となり、先進医療は自費で併用ができる。国の助成はなくなる。
流産を防ぐため受精卵の遺伝子を調べる「着床前診断」も、先進医療に含まれるか未定だ。患者は妊娠の可能性に懸けて重い経済的負担を受け入れるか、選択肢を断念するかの決断を迫られることになる。
鳥取県は22年度、負担増を防ぐ助成制度を新設する方針。全額自費となる混合診療に対し1回30万円、保険診療と併用の先進医療は1回5万円を上限に支援する。県によると「県内で実施される体外受精のうち、保険診療で済むのは1割程度しかない」という。
「ミオ」の見尾院長は鳥取県に「英断」と感謝する一方、なお患者の約2割を占める島根県民の負担を心配する。同県は22年度、先進医療に対し1回5万円を独自に助成する方針だが、混合診療は対象外。不妊治療助成は市町村が独自に上乗せする場合があり、松江市は「現状より負担が増えないよう調整したい」と検討している。
広島県は22年度、島根県と同様の水準の助成を予定。広島市は「現時点で上乗せは考えていない」とする。山口県と岡山県は助成の予定はないという。
引用元:
不妊治療、選択次第で負担増 4月から保険適用、自治体助成に差(Yahoo!ニュース)