「経血量が多くて漏れてしまう」「生理痛がつらい」といった生理の悩みで産婦人科を受診してもいいのか?そんな疑問を持つ人は多く、実際に生理で困った経験があっても受診したことがない人が多いことがアンケート調査の結果でわかりました。ところが、経血量が多いことは「漏れるから大変」といったこと以上に女性の体に大きな影響を与えているのだといいます。「生理を変えれば人生が1ランクアップする」と提言している産婦人科医に話を聞きました。
■経血量が多くて困った経験 でも「受診したことない」が6割
10代〜50代で生理を経験している人600人以上に行ったアンケート調査の結果、「経血量の多さにより日常生活で困った経験がある」と回答した人のうち6割が婦人科を受診せず、経血量や生理の辛さを我慢している傾向が明らかになりました。
アンケート調査は大王製紙などが2021年11月から2022年1月にかけて行ったもので、10代〜50代の生理を経験している638人から回答を得ました。それによりますと、経血量の多さにより“日常生活で困った経験がある”と答えた人からは
「長い会議でイスまで汚してしまった」
「就寝時も朝まで交換しないとかなり漏れてしまうので、夜中に2〜3回ほどアラームをセットしてナプキンの交換をしている」
「立ち仕事でトイレに行く暇がない日はやむを得ず介護用オムツを履くこともあった」
といった切実な声があがっています。
しかし、経血量の多さで困った経験があると回答した人のうち6割は、経血量の悩みで婦人科を受診したことがないと答えています。
受診しない理由を見ると
「経血量の多さを他人と比べることがないため仕方ないと思っていた」
「経血量で婦人科に行っていいと知らなかった」
「倒れるほどではないため婦人科に相談していいものなのかわからなかった」
といった声が上がり、生理の悩みについて他の人に相談する機会がないことや婦人科を受診することのハードルの高さが浮き彫りになっています。
■漏れるとかそういうことよりもっと大きな問題だった
では「過多月経」とはいったいどんなものなのか。インターネットでは「通常より経血量が非常に多くなる症状のこと」「1周期の総出血量が140ミリリットル以上」といった記述が目立ちますが、自分で経血量を測ることは難しいので、受診の目安を産婦人科医に聞いてみることにしました。
神奈川県の「藤沢女性のクリニックもんま」の院長、門間美佳医師に話を聞くと、「正式な定義は多分ないと思う。おそらく夜用ナプキンを2時間で替えるぐらいとか。あとは階段で息切れとか、貧血症状。立ちくらみとか、頭痛、疲れやすい、朝起きられないといった症状ですね」との答えが。受診の目安は貧血?出血する血液の量が問題なのではないのでしょうか?
門間医師によると、生理で出血するということは、「自分の体の中で作った大事なもの(特に鉄分)が全部ざるのように出て行ってしまう、すごくもったいないこと」なのだといいます。つまり、出血が多ければ多いほど栄養素、特に鉄分が体の外に出て行ってしまい、貧血状態に陥るということなのです。
「生理で血を失うということは女性の体にとってすごく大きな損失だから、漏れるのが困るとかそういう問題じゃなくて、とにかく貧血を治したらもっと元気になれるし、肌も髪の毛も良くなるし、精神的にも落ち着くし、もうとにかく、生理(による出血)をなんとかして少なくした方がいいっていう話をしたいんですよね」。つまり、出血する量を減らせば、外に流れ出す栄養素を減らすことができる、ということだというのです。
■生理の出血を減らすには?
実際に経血の量を減らすにはどうしたらいいのか尋ねると「低用量ピルを飲むというのが一番の解決法だと考えています」という答えが返ってきました。ピルというと「避妊のために飲むもの」というイメージを持っている人も多いかもしれませんが、ピルを飲むと子宮内膜が厚くならずに月経が起こるため、出血量を減らしたり、生理痛を軽くしたりする効果があります。
門間医師によると生理に関する様々な無理解が過多月経や生理痛を我慢する傾向を生んでいるといいます。その一つが「生理がちゃんとあるのが健康のバロメーター」という意識の人が多いこと。「赤ちゃんのベッドを作って、いらないのを剥がすのが生理だよって理解してほしいんですね。赤ちゃんのベッドが必要ないとき(妊娠を望んでいないとき)は薄くしておく。ピルを飲むとかミレーナ(子宮内避妊システム)を子宮の中に入れておくとか。ムダな生理を減らすことが健康につながると考えています」
また、若い人が直面しがちなのが「母親ブロック」。今の高校生や大学生の母親世代が若かった頃はまだ用量が多く副作用の大きいピルしかなく、保険も適用されていなかったため、母親にピルを飲むことを反対されるケースが少なくないのだそうです。
■生理を変えることで人生が1ランクアップする
門間医師は生理とのつきあい方について「痛くて試合に出られないとか試験だとかそういう自分の大事なところで今まで積み上げてきた努力が発揮できないというデメリットはすごく大きいですよね。だから女性が生き生きと自分の力を発揮するために、生理との付き合い方を考えてほしい。そういうことで自分の人生が1ランクも2ランクもステップアップする」と述べ、「最近は婦人科も増えていますし、何軒か行ってみて合うところを探せばいいと思う。ぜひ婦人科にきてほしい」と話しました。
■とはいえ産婦人科って行きにくい
とはいえ、産婦人科のハードルは特に若い人には高いものです。そんな若者達の気持ちをすくい上げ、行きやすい場所になってほしい、という思いから「若者が行きやすい産婦人科についてのアンケート調査」が行われてます。アンケートを行っているのは、避妊や中絶などの生殖に関する権利について調査・発信している「なんでないのプロジェクト」。
代表の福田和子さんはスウェーデンに留学した際、若者が気軽に行って、生理や避妊の相談、カウンセリングなどを受けられる、若者のための産婦人科、「ユースクリニック」が国内に約250か所あるということを知り、ぜひ日本にもそういう場所を設けてほしいと考えるようになりました。ユースクリニックで医師に「よく来たね」「自分の体のことを考えて偉いね」と言われ、歓迎されていると感じられたこともよかったと話します。
現在集計中のアンケートの中にも「高圧的に接しないでほしい」「絶対に怒らないでほしい」といった回答が見受けられるといいます。また、「生理のことで行ってもいいなら、いいと書いてほしい」「病気じゃなくても来ていいよっていう感じでいてくれたらいい」といった意見もあり、出産や不妊治療などが全面に押し出されている病院が多いため、生理痛や過多月経のような悩みや避妊の相談で受診してはいけないのでは、と感じている人が多いことがわかります。
また、それ以外では「費用のことを最初に教えてほしい」「保険についても説明がほしい」といった費用に関することや、「名前でなく番号で呼んでほしい」「受付で症状を口頭ではなく書面で聞いてほしい」といったプライバシーに関することが目立ったほか、「内診をしないで済むなら他の選択肢を教えてほしい」「説明なく、いきなり器具を挿入されてびっくりした」といった内診に対する不安が多く寄せられているということです。
福田さんはこの結果を日本産婦人科医会のセミナーで産婦人科の医師たちに若者達の声として届ける予定です。
■日本にもユースクリニックが
「ユースクリニック」と検索してみると、スウェーデンの例だけでなく、日本国内でも定期的に「ユースクリニック」として開院している産婦人科や薬局があることがわかりました。首都圏が中心で、軒数も多くありませんが、そのほとんどが、医師や看護師に無料〜500円ほどで相談ができる場所となっているようです。
なんでないのプロジェクトの福田さんは「若い頃にユースクリニックで相談するといった“自分の体をケアをすること”を身につけると、その先もずっとケアできる。若い頃に生理とかでちょくちょく行けていたら、その後も産婦人科とつながりやすいのかな」と話してくれました。
話を伺った門間医師は、生理痛の中に病気が隠れている可能性があると同時に、栄養が足りなくなることによって精神的にも異常が出やすい、と話していました。
「ユースクリニック」でなくても、また若い人でなくても、長いつきあいをしなくてはならない「生理」を見直すことは自分の生活をよりよくすることにつながるかもしれません。
引用元:
過多月経”でも「受診したことがない」が6割 産婦人科医は「生理を変えれば人生が1ランクアップする」(TBSニュース)