「不妊治療の保険適用」が前内閣の目玉政策として打ち出され、約1年半の期間を経て、今年4月から不妊治療に保険が適用されることとなりました。話題に上ってから、その詳細はなかなか決定されないままでしたが、ついにこの2月9日、厚生労働省から適用内容と保険点数が発表されました。

この「保険適用」にあたって特に注目されていたのが、「どの治療が、どこまで適用されるのか」と、「治療費はいくらと設定されるのか」です。これは、当事者はもちろん、医療関係者の中でも様々な意見や憶測が飛び交っていました。とりわけ当事者の気持ちの揺れは大きく、私が代表を務めるNPO法人Fineにも、不安と期待が入り混じった非常に多くの意見が寄せられました。

 そこでFineでは昨年末、緊急アンケート「不妊治療の保険適用に関する、みんなの意見募集」を実施、期間が約10日間であったにもかかわらず、632人の回答を得ました。その結果をまとめたものは厚生労働省と野田聖子内閣府特命担当大臣(少子化対策)に提出したのですが、残念ながらその要望がすべて反映されたとは言えません。

このアンケートには、切実な当事者の声が多数寄せられました。今回のコラムでは、プレスリリースにはとても書ききれなかった、多くの当事者の生の声を、ごく一部ですがお伝えしたいと思います。

 当事者の声で多く寄せられたのは、体外受精に対する保険適用の回数制限と年齢制限についてです。

 厚生労働省発表によると、これまでの特定不妊治療費助成制度と同じく、治療を開始した時の妻の年齢が40歳未満の場合は通算6回まで、妻の年齢が40歳以上43歳未満の場合は通算3回までとされています。この制限に対する意見は賛成、反対ともに多くの意見が見られました。

体外受精6回の回数制限に「納得できていない」

 回数制限に反対する意見はこのようなものがありました。

 「年齢制限は継続で仕方ないと思いますが、回数制限は撤回してほしいと思っております。20代の若い男女でも不妊治療を長く受けている夫婦もいます。6回までという制限の理由が納得できておりません」(年齢無回答・愛知県)

年齢制限は「国からあきらめろと言われているよう」

 年齢制限に反対する声は、このようなものがありました。

 「卵子が採れるうちは、胚盤胞ができるうちは、不妊治療を続けていきたいと思いますが、年齢で保険適用外とされてしまうのは、国からもあきらめろと言われているようで、とても苦しいです」(40代前半・東京都)

 「年齢制限をもう少しあげてほしい。45歳までとか。 この2年、コロナの自粛生活により通院をかなり減らしました。不妊治療に行きたかったけど、感染拡大地区に病院があったため、怖くて何か月か病院に行くのも自粛していました。 なので、今回のみ2年延長とか年齢制限を2年間だけでも緩和してほしいです」(40代前半・新潟県)

年齢や回数制限に賛成の意見も多数

 一方、当事者の中にも、年齢や回数制限に賛成の意見も多数見られました。

 「年齢と回数は設けたほうがいいと思う。本当にやめどきがわからないので」(30代後半・新潟県)

 「年齢制限は絶対必要だと思います。若い人たちに回した方が、出生率も上がると思います」(20代後半・東京都)

 「ある程度の年齢制限や回数制限は必要になってくるかと思いますが、未来ある若い世代が希望を持てる制度にしていただけたらうれしいです」(30代前半・愛知県)」

 保険適用で経済的負担が軽減されることは、当事者の中でも大いに期待されていることです。

 「これまで助成金は入金が遅いため、一時的な持ち出しが大きかった。すぐに持ち出せる金額がないことがあり、保険適用になれば限度額適用認定証が使えることに期待をしています」(30代後半・東京都)

 「不妊治療のために退職をして専業主婦になり、貯金がかなり減ってしまっているので負担が減ることを期待します」(30代前半・千葉県)

 「不妊治療は、出口の見えないゴールを目指しているような、精神的にも肉体的にもつらさを伴うものだが、 経済的な負担が少なくなることで、お金に関してのストレスが緩和される」(40代前半・東京都)




クリニックが混んで、待ち時間が長くなる?

一方、治療費が安くなることによる病院通いに関しては、混みあうことによる病院の待ち時間、仕事との両立、医療の質の低下など、さまざまな種類の不安も見られました。

 「保険適用になることで、治療を受ける人が更に増えると思います。通院していると待ち時間が非常に長く、3時間はかかります。働きながらでも通院しやすい労働環境の整備なども必要かと思います」(30代後半・福岡県)

 「不妊治療クリニックが混み合い、仕事と治療が両立できなくなる不安がある」(30代前半・大阪府)

 「保険が適用される治療、されない治療が出てくることで、適用される治療のみ行うことによる質の低下が不安。また混合診療が認められない場合、保険適用でない治療を行わなければなくなった時に全額自己負担となり、今まで以上に費用が高額になることが怖いです」(30代前半・千葉県)

 「どの病院でも同じ質の治療が出来るように、第三者機関のチェックが必要だと思うが、国がそこまで整備してくれるのか疑問」(30代後半・島根県)

保険適用をきっかけに職場の理解が進むことを期待

 他にも、精神的なケアや、保険適用になることによって周囲からプレッシャーを受けるのではと懸念する声などもありましたが、適用により社会的認知が上がり、環境が向上することを期待する声も多数ありました。

 「不妊治療を理由に休職しようとしても、会社から認められませんでした。有給なども自由にとれません。休みがとれないと治療もできません。(保険適用をきっかけに)理解のある社会になることを期待します」(30代前半・東京都)

 「治療開始時の夫婦の心のハードルが下がることを期待する。自身は夫婦の意見がそろうまでに5年近くかかり、ようやく子宮筋腫をきっかけとして取り組むことになったことから」(40代後半・東京都)

 「長く続く不妊治療の疲弊と落胆の中で、保険適用はもう少しだけがんばりたいと思わせてもらえる希望の光です」(30代後半・埼玉県)

 不妊治療には大きく四つの負担がある、とFineでは設立当初から提唱しています。「身体的(からだ)」「精神的(こころ)」「経済的(お金)」「時間(通院)」の負担です。今回の保険適用で、その「お金」の負担に関しては、軽減されるようになるかもしれません。しかし、やはり不妊治療の課題は多岐にわたっており、保険適用で不妊治療の課題や負担が一挙に解決できるわけではなく、それ以外の課題についても引き続き取り組んでいく必要があることを、このアンケートのコメントから、実感しました。

 不妊治療の保険適用は、いよいよ4月1日から始まります。当事者が様々な面で希望を見いだし、期待しているこの制度が、その後、当事者にどのような影響を与えていくのか、引き続き声を集めながら、必要なところへ届け続けたいと思います。


引用元:
4月から不妊治療に保険適用 回数や年齢制限に賛否 クリニック混雑の心配も(ヨミドクター)