コロナ禍での出産で起きた予期せぬ事態に、お母さんと「小さな命」を助けようと、手を差し伸べた病院が困難に立ち向かいました。

【お姉ちゃん】
「いないいないばあ」

お姉ちゃんと楽しそうに遊ぶのは生後9カ月の石井周(いしい あまね)くんです。赤ちゃんはおよそ3000グラムの体重で生まれてくるのが一般的だといわれていますが、周くんが生まれた時の体重はわずか566グラム。予定日より3カ月早い出産で小さく生まれました。産後は通常、1週間前後で親子一緒に退院となりますが、周くんは7カ月という長い期間を病院で過ごしました。小さく産んだことに母真紀子さんは、複雑な思いを抱いたと言います。

【石井真紀子さん】
「自分はなんてことをしてしまったんだと、人一人の人生をダメにしてしまったみたいな絶望しかなくてそんな感じで過ごしていました」

さらに追い打ちをかけたのが新型コロナウイルス。入院する周くんの病棟では面会が制限されました。

【広島市立広島市民病院新生児科・前野誓子部長】
「面会制限をさせてもらっているのが、とても心苦しく思ったりするとはいってもコロナを持ち込んではいけないという思いもあるので、ご両親にはいろいろな負担をかけてしまっていると思う」

そこで病院は赤ちゃんの日々の成長をお母さんに伝えようと、「記録ノート」を作りました。長期間の入院で会うことができない赤ちゃんとお母さんをつなぎます。ノートには入院中にしか見られない周くんの様子が写真とともにびっしりと綴られました。さらに、周くんを近くに感じてもらおうと看護師さんがビデオの撮影も。

【看護師】
4月1日今15時半です泣いているので動画を撮ってみました。まだか細いですが元気に泣いています」

【石井真紀子さん】
「看護師から元気に泣いていますと聞いてもなかなか泣き声を聞くことができないけど、泣いている様子を撮ってくれていて、それはすごく嬉しかったです。初めて声が聞けたというか」

周くんが生まれて7カ月後。体重は3200グラム、自宅で生活できるようになったため、ようやく退院を迎えました。

【石井真紀子さん】
「本当にこの日が来るんだなあ、まさかこんな日が来るなんてという思いでした。普通の生活をしているだけなんですけどそれがやっぱりすごく幸せですね」

この日は周くんの健康診断です。

【広島市立広島市民病院新生児科・前野誓子部長】
「お薬はだいぶ減りましたね、急に。この調子でいいと思います」

これには真紀子さんもひと安心。コロナ禍での突然の早産。さまざまな困難を乗り越えた今、「新しい命」との日常をかみしめています。

【石井真紀子さん】
「会えない期間が長くてそういう状況をふまえて 今、毎日一緒に過ごせるのがすごく幸せでありがたいことだと思っています」

引用元:
566グラムで生まれた”小さな命” コロナ禍で赤ちゃんと母親をつないだ「記録ノート」【広島発】(広島ニュースTSS)