日本がん・生殖医療学会は、がんの治療によって生殖機能が損なわれる場合に備えて精子や卵子を凍結保存した患者の情報登録システムの運用を2022年1月から始める。登録者は専用のアプリで定期的に病状や不妊治療の経過を入力。保存した精子や卵子を使った不妊治療でどのくらい子どもが生まれたか、実態の分析に活用する。

約6千人が参加して18年から運用する既存の仕組みを刷新する。治療に抗がん剤を使う自己免疫疾患の患者も対象。従来の仕組みでは保存した精子や卵子を使わないまま何年もたって連絡が取れなくなる場合があったが、情報の精度を高め、長期的な支援につなげる。

新システムにはまず約140の医療機関が参加する。医療機関は患者から同意を得た上で、氏名や居住地、病名、予定している治療、生殖機能のデータなどを登録する。患者は専用アプリをダウンロードし、少なくとも年1回は病状や不妊治療の経過を入力する。

従来の仕組みに登録していた人も、同意を得られれば新システムに移行する。政府による精子や卵子の凍結保存費用の公費補助制度を利用する場合は、新システムへの登録が必要となる。

アプリでは患者同士が匿名で交流したり、学会から最新の医療情報を発信したりする。システムづくりに関わる埼玉医科大の高井泰教授(産婦人科)は「医療者と患者の関係が切れずにコミュニケーションを取れるツールになればよい」と話している。〔


引用元:
がん患者対象に精子や卵子保存、22年1月から新システム(日本経済新聞)