女性は高齢になるに従い妊娠する確率が低下すると聞いても誰も驚かない。では、男性はどうだろうか。

英国で生殖医療や遺伝子治療を行っている医療機関である、The Centre for Reproductive & Genetic HealthのGuy Morris氏らが行った研究によると、男性もやはり加齢とともに、新たに子どもを授かる確率は低下するようだ。

研究の詳細は、「Acta Obstetricia et Gynecologica Scandinavica」に8月17日掲載された。

この研究は、英国の単一施設で後向きコホート研究として実施された。研究参加者は、パートナーが過去に妊娠したことがない原発性不妊、または過去に妊娠経験があるがその後に妊娠しない続発性不妊であり、夫婦で対外受精(IVF)または卵細胞質内精子注入法(ICSI。いわゆる顕微授精)を受けている男性。

一次転帰として出生率、二次転帰として流産率などを検討した。

4,271人の男性に対し4,833サイクルの治療が施行され、1,974人(40.8%)が挙児に至った。

50歳以下と51歳以上とに二分し、パートナーの女性の年齢などの因子で調整し比較すると、51歳以上では挙児に至るオッズ比が0.674(95%信頼区間0.482〜0.943)であり、33%低かった(P=0.021)。二次転帰として評価した流産率には有意差がなかった。

Morris氏は、高齢出産の増加は世界的な傾向だとしている。例えば2016年にイングランドとウェールズで生まれた子どもの父親の15%は、40歳以上だったとのことだ。

これまでの研究で、父親の年齢が45歳を超えると、母体の妊娠糖尿病、早産、新生児けいれんのリスクや、子どもの神経精神疾患のリスクが高くなる可能性が指摘されている。

米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスで男性不妊治療を統括しているBobby Najari氏は、「高齢男性に対する生殖補助医療の成績が良好でないという結果は、それほど驚くことではない。ただし、治療は日々進化している」と話す。

同氏によると、高齢男性の精子はDNA断片化率が高い傾向があるといい、精子の数が少ないこととともにDNA断片化率の高さが、生殖補助医療の成功率に影響を及ぼしている可能性があるという。

Najari氏は今、DNA断片化率の増加につながる因子の特定を目指している。年齢以外には、例えば喫煙、生殖器の感染症、あるいは解剖学的な異常(例えば陰嚢の静脈瘤のような状態)などが現在、男性不妊のリスク因子として目されているとのことだ。

年齢を変えることはできないが、生活習慣は修正可能だ。「DNA断片化率の増加などの寄与因子のうち、可逆性のある因子を明らかにし、治療に役立てていきたい」と同氏は語っている。

米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部の泌尿器科教授であるRobert Brannigan氏も、男性不妊が心配な男性にはいくつもの対策があると解説する。

「生殖医療を専門とする医師の下での医学的治療だけでなく、生活習慣の変更が妊娠率の改善につながる可能性がある」とし、今回発表された研究結果のみを根拠に、50歳を過ぎた男性とそのパートナーが、簡単に挙児をあきらめるべきでないと話す。

また不妊治療を受ける際のポイントとしてBrannigan氏は、「夫婦でともに診察を受けることは非常に重要だと思う。これまでの不妊治療は女性により多くの負担がかかっていたのではないか」と述べている。

そして、「女性に対して行われる不妊治療よりも、男性に対しては侵襲性の低い方法を提案できることが多い」と話している。

引用元:
研究データが示す高齢になるほど男性不妊が増える理由(Yahooニュース)