逆流性の心臓弁膜症も妊婦の合併症リスクを高める
妊娠中の女性の心臓弁膜症は、その種類に関係なく、深刻な合併症のリスクをもたらす可能性のあることが、米ジョンズ・ホプキンス大学のErin Michos氏らによる大規模研究で示された。
心臓弁膜症は、逆流性のものと狭窄性のものに大別される。これまで妊娠中の女性にとって、逆流性の心臓弁膜症は狭窄性の心臓弁膜症と比べると有害性は低いと考えられていた。
しかし、2万人以上の女性の医療記録を調べたところ、いずれの心臓弁膜症も、妊娠・分娩中の女性の出血や高血圧、臓器障害など、さまざまな合併症リスクを高めることが判明したという。この研究結果は、「American Journal of Cardiology」に8月24日発表された。
心臓には血液を正しい方向に送り出すための弁が4つある。心臓弁膜症とは、これらの弁が、加齢や外傷などさまざまな原因により正常に機能しなくなった状態をいう。
狭窄性の心臓弁膜症では、弁の開きが悪くなることで血流が妨げられ、心臓に負荷がかかる。現行のさまざまなガイドラインでの心臓弁膜症のリスク評価では、このタイプの弁膜症に主眼が置かれている。一方、逆流性の心臓弁膜症とは、心臓弁の閉じ方が不完全なために血液が漏れて逆流してしまう状態を指す。
この研究でMichos氏らは、2016〜2018年の米国の入院患者データ(National Inpatient Sample;NIS)を分析した。同期間における出産のための入院件数は1120万件超で、このうち2万349人に心臓弁膜症の既往があった。
データを分析したところ、心臓弁膜症のある妊婦は同疾患のない妊婦に比べて、年齢が高く、入院期間がより長く、高血圧や糖尿病などの疾患を抱えている率が高いことが分かった。
臨床的因子や社会経済的要因を調整して解析した結果、心臓弁膜症がある妊婦では、同疾患がない妊婦と比べて、妊娠中の危険な合併症として知られる妊娠高血圧腎症、分娩時出血、常位胎盤早期剥離のリスクが、それぞれ90%、40%、30%高いことが判明した。
また、妊娠中の女性が周産期心筋症、肺水腫、虚血性心疾患や不整脈などの心血管疾患イベントを発症するリスクについても、心臓弁膜症の種類に関係なく上昇することが示された。
Michos氏は同大学のプレスリリースで、「今回の研究で得られた結果に基づき、妊娠前と妊娠中には、全ての種類の心臓弁膜症のスクリーニングを行うようにする必要がある」と主張している。
論文の筆頭著者で、同大学心臓病学分野のAnum Minhas氏は、「残念ながら、女性医療の大部分がエビデンスよりも個人の経験や自分が正しいと思う専門家の意見に基づいて行われている」と指摘する。
今回の研究は、重度の心臓弁膜症の既往がある女性たちの診療経験や、その評価ツールの有用性について検討した研究の不足を受けて実施されたと、同氏は研究背景を語っている。
心臓弁膜症のある妊婦では、早産や心不全などの合併症の発生率が年間で最大10%に上る。Michos氏は、「どんなものであれ心疾患のある女性は、循環器科と産科の専門医で構成されたチームによる医療を受けることが有益だろう」と話す。
また、同氏らはリスクを予測するためのリスクカリキュレーターも改訂すべきとの見解を示している。
Minhas氏は、「われわれの研究から、逆流性の心臓弁膜症がある女性でも、妊娠中に問題が起こる可能性のあることが明らかになった。心臓弁膜症がある妊婦に対しては、逆流性か狭窄性かを問わず、同等の注意を払うべきだ」と述べている。(HealthDay News 2021年9月9日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.ajconline.org/article/S0002-9149(21)00724-4/fulltext
Press Release
https://www.hopkinsmedicine.org/news/newsroom/news-releases/leaky-heart-valves-in-pregnant-women-need-more-attention-than-once-thought-study-suggests
構成/DIME編集部
引用元:
妊娠中の女性の心臓弁膜症は深刻な合併症をもたらすリスクあり、米ジョンズ・ホプキンス大学研究グループ報告(@DIME)