岩手県立釜石病院(釜石市)産婦人科で分娩(ぶんべん)業務が10月から休止されることに伴い、地元で戸惑いと不安が広がっている。県医療局は慢性的な医師不足を理由に、県立大船渡病院(大船渡市)に分娩を集約する考えだ。釜石医療圏(釜石市、大槌町)で唯一の施設として存続を求める声は強いが、先行きは見通せない。(盛岡総局・加藤伸一)
 県立釜石病院の産婦人科は、医師不足を背景に2007年夏から常勤医が不在となっている。
 約35キロ離れた県立大船渡病院から医師1人が1週間交代で派遣され、ここ数年は年間約100件の出産に対応してきた。帝王切開などリスクの高い出産は大船渡病院が担う。
 県医療局が分娩休止の方針を明らかにしたのは3月。新生児を診察する小児科医の派遣が10月以降難しくなったのが大きな理由だ。
 県医療局は、産婦人科そのものは存続させる方針。産前産後のサポートに当たるほか、出産時期が迫った妊婦を大船渡病院近隣に事前宿泊させるといった支援策を検討する。
 こうした状況を受け、釜石市と大槌町は4月、市議会、町議会との連名で、医師を派遣してきた岩手医大に対し(1)安定的な医師の派遣(2)普通分娩の確保−を要望した。
 6月には、釜石医療圏で分娩機能の確保を県に求める意見書を市議会が可決。地元の市民団体も同様の要請書を約1万5000人の署名簿と合わせて県に提出した。
 県医療局の担当者は「地域住民の不安を取り除くため、釜石市、大槌町と協議して早い段階でサポートの仕方を示したい」と理解を求めるが、地元自治体は県の方針を一方的と捉えている。野田武則市長は「県内9医療圏のうち釜石医療圏だけが分娩できない地域になる。重みを感じてほしい」と不満を隠さない。
 県医療局労働組合釜石病院支部によると、出産を予定する妊婦から「今後どうなるのか」「ここで産めなくなるのか」と戸惑いの声が多く寄せられている。今後の勤務に不安を漏らす助産師もいるという。
 県内で出産可能な施設は、釜石病院を含め24カ所。県立病院の産婦人科医集約を図った07年以降、約20カ所減った。開業医の閉鎖が相次いだことも大きい。
 久慈医療圏(久慈市など4市町村)で唯一、分娩可能な県立久慈病院も常勤医がおらず、県立二戸病院の医師が派遣されている。
 釜石市などで産前産後の妊婦ケアをしているNPO法人まんまるママいわて(花巻市)の佐藤美代子代表理事は「医師不足の現状を見れば、どこで分娩機能がなくなってもおかしくない」と指摘する。
 今後の釜石医療圏の妊婦サポートに関し、「産後ケアは出産後の単なる延長入院とは違う。現場の意見を聞き、母親に寄り添った対策をしてほしい」と求めている。

引用元:
分娩業務休止方針に地元戸惑い 医療圏唯一の県立釜石病院(河北新報)