2022年4月から不妊治療への公的医療保険適用が拡充される見通しだ。厚生労働省はどの治療や薬剤を範囲とするかの協議を始めた。体外受精などが対象となる方針で、年末までに決まる。



 晩婚化などの影響で不妊に悩む夫婦は増えているが、不妊治療は一部を除き保険適用外のため、患者には高額な自費診療が負担になっている。保険適用は菅義偉首相が少子化対策の一環として打ち出した。



 体外受精によって誕生した子どもの数は18年に約5万7千人と過去最多を更新。治療件数も45万件を超えた。子どもを望む人たちが安心して治療に臨める環境を早急に整えなければならない。政府は有効性や安全性を精査し、丁寧に制度設計を進めてほしい。



 保険適用の範囲は、日本生殖医学会が先月公表したガイドラインの推奨度を参考にする。治療法や検査について推奨レベルを3段階で評価しており、厚労省はこのうち推奨度の高い「強く推奨」と「推奨」とされた項目を対象とする方向だ。



 「強く推奨」には体外受精や顕微授精の他、男性に対する薬剤治療がある。「推奨」には35歳以上または胚移植で2回以上続けて妊娠しなかった女性に二つの胚を一度に移植するといった方法が挙がる。科学的根拠が明確でなく推奨度が低い「実施を考慮」の項目は自由診療のままだが、一部は「先進医療」に位置づけ、保険診療と併用できる仕組みとなりそうだ。



 不妊治療の方法は個人差が大きく多岐にわたるため、どこまでを保険適用とするかや混合診療の扱いをどうするかなど、細かい検討が求められる。



 厚労省が昨年実施した調査によると、体外受精1回の平均費用は約50万円。治療経験者の平均回数は3・7回だった。高額な費用に治療を断念せざるを得ない夫婦も少なくない。



 政府はこれまで、助成制度で負担軽減を図ってきた。来年4月の保険適用までのつなぎとして今年1月には、所得制限を撤廃。初回のみ30万円、2回目以降は15万円だった助成額を、2回目以降も30万円に倍増し、助成回数も子どもごとに設けるなど、支援を広げた。



 保険適用が実施されれば、原則医療費の3割負担で済み、より治療へのハードルが下がるだろう。ただし助成制度が廃止され、適用外の治療を望んだ場合に現状より負担が重くなる恐れもあり、助成金の継続など特例的な措置も考えるべきだ。



 経済的な支援と併せて、心理的なケアや治療を受けやすい環境づくりも重要だ。治療が妊娠に結びつかなかったり、妊娠しても出産に至らなかったりすれば、精神的な負担はいかばかりか。相談や悩みをサポートできる態勢が必要不可欠であろう。国は、治療に使える休暇制度の導入を企業に働き掛けるなど、治療への理解促進に取り組まなければならない。



引用元:
不妊治療に保険適用 安心して子どもを望める環境に(愛媛新聞)