肥満が糖尿病や心疾患のリスク因子であることは周知の事実だが、過体重や肥満は二次がんの発症リスクにも影響を与える可能性があるとする研究結果を、米カイザー・パーマネンテコロラド健康研究所のHeather Spencer Feigelson氏らが発表した。過体重や肥満の乳がん患者では、乳がんとは異なる2つ目の原発がんを発症するリスクが有意に増加することが明らかになったという。詳細は、「Journal of the National Cancer Institute」に4月5日掲載された。

Feigelson氏らは、米コロラド州およびワシントン州のカイザー・パーマネンテの女性の乳がん患者6,481人(82.2%が白人)を対象に、BMIと全ての二次がん、肥満関連のがん、二次乳がん、およびER(エストロゲン受容体)陽性二次乳がんの発症との関連を調べた。対象者が最初に乳がんと診断されたときの平均年齢は61.2歳で、33.4%の人が過体重、33.8%の人が肥満であった。なお、肥満関連のがんとは、大腸がん、子宮がん、卵巣がん、膵臓がんなどのことである。

追跡期間中央値88.0カ月の間に、対象者の12.7%(822人)が二次がんを発症した。二次がんの約62%は肥満関連のがん、約40%は二次乳がんであった。多変量モデルを用いた解析の結果、がんの発症リスクは、BMIが5kg/m2増加するごとに、がん種にかかわらず二次がんで7%、肥満関連がんで13%、二次乳がんで11%、ER陽性二次乳がんで15%、それぞれ増加することが判明した。

Feigelson氏らは、「乳がんサバイバーでの二次がん発症リスクの増加は、両者のリスク因子が共通しているためだと考えられる。その一つはもちろん肥満だ。また、遺伝的感受性や長期に及ぶ乳がん治療の影響などもリスク因子の一部だろう」と推察している。また、「肥満や過体重の乳がんサバイバーでの二次がん発症リスクは、肥満や過体重の人での新規乳がんの発症リスクと同程度だった。つまり、この結果は、肥満や過体重ががんのリスク因子としていかに重要であるかを改めて示したエビデンスと言える」と強調している。

では、過体重や肥満の人が体重を減らせば、がんの発症リスクを低下させられるのだろうか。Feigelson氏は、「体重は容易には減らせないため、減量してそれを維持することでリスクが低下したことを示すエビデンスの数は限られている」と指摘。その上で、「科学的には、減量によりがんの発症リスクが低下することが示唆される。しかし、それを示した研究といえば、肥満手術を受けた女性を対象にしたものであり、実際に、大幅な減量により、がんの発症リスクが低下したという限定的なエビデンスがあるだけだ」と説明している。

さらにFeigelson氏は、「二次乳がんや二次がんのリスク因子の中には、患者自身ではどうすることもできないものもある。しかし、体重管理は自分でコントロールすることができる。がんの発症を恐れている人や、がんサバイバーの人にとって、体重のような自分自身でコントロールや対処が可能な何かを持っていることは、非常に重要な要素となるはずだ」と述べている。その上で同氏は、「健康的な体重を維持し、活動的で、座位時間が長くなり過ぎないようにするなどの健康的な習慣を日常生活に取り入れるべきだ。それががんの予防につながるだろう」と助言している


引用元:
乳がんサバイバーの過体重は二次がんリスクと関連 (HealthDay)