産婦人科医院の空白地となっていた大分市大在・坂ノ市地区に新たな産科が開業し、地域の周産期医療を支えている。両地区は区画整理による宅地造成などで人口が増加中。昨年4月に「くまがい産婦人科」(横塚)が閉院して産科医院がなくなったが、土地と建物を引き継いだ女性医師が同11月に「ひらかわ産婦人科医院」として再開した。「安心して産める環境を地域に残したい」という関係者の思いが実を結んだ。
 くまがい産婦人科は熊谷淳二医師(69)が1992年に開業。年齢的な面などを考えて数年前から同級生や知り合いを通じて後を託す医師を探す中、医療コンサルタント会社の紹介で大分大付属病院に勤めていた平川東望子(ともこ)医師(45)と出会った。
 平川医師は地域の現状や、育児サークルの利用者ら300人以上から産科の存続を求める署名が集まったという事情を聞き、開業を決断。一昨年秋に事業継承の話がまとまったという。
 前医院で事務長を務めた熊谷医師の妻孝子さん(64)=円ブリオ大分代表=は「産科医は出産を取り扱うため勤務条件が厳しい。少子化もあって他の診療科と比べなり手が少ない中、本当にありがたい」と感謝する。
 大掛かりな改装を経てオープンした産婦人科医院は、前医院の看護師長で助産師の武石美智代さん(54)らスタッフの大半が残り、好評だった母乳マッサージも専門外来を設けた。昨年12月中旬に早くも第1号の赤ちゃんが誕生。開業から3カ月で6人が生まれた。
 妊婦にとって身近な地域の産科は心強い存在。2月に第3子を産んだ中山愛さん(31)=城原=は、かかっていた市中心部の医院から転院した。「地元になくなった時はどうしようかと思った。通院や出産はもちろん、異変があった際に駆け込むのに近い方が安心」と話す。
 「少しでも地域の女性の役に立ちたい」と力を込める平川医師。「前医院の良いところを大切にしながら、気軽に来院してもらえる温かみのある医院にしたい」と優しくほほ笑んだ。

<メモ>
 県の調査によると、県内の分娩(ぶんべん)可能な医療施設数は2006年の40施設から21年には31施設に、大分市も19から12施設に減少している。医師の高齢化や後継者不在などが閉院の原因という。

引用元:
「安心して産める環境を」大分市大在・坂ノ市地区、女性医師が医院引き継ぐ(大分)合同新聞