妊娠はするものの、流産や死産を繰り返して結果的に子どもを持てない場合を「不育症」と呼ぶ。原因はさまざまだが、専門外来で検査をし、適切な治療を受けることで不育症患者の約85%が出産にたどりつくことができている。
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流産は珍しいことではなく、全妊娠の10〜15%で起こる。そのほとんどは赤ちゃん側(受精卵)の染色体異常によるもので、自然淘汰ともいえる。そのため次回の妊娠では問題なく出産できる可能性が大きい。
しかし、流産を2回3回と繰り返してしまうケースもある。日本で妊娠歴のある35〜79歳の女性を対象に行われた調査では、約4.2%が2回以上の流産を経験し、約1%は3回以上経験していた。日本医科大学病院産婦人科教授の竹下俊行医師はこう話す。
「流産を繰り返す場合は、赤ちゃん側だけではなく親側に原因がある可能性を考えなければなりません。次の流産を防ぐには、検査をして原因を見つけ出し、治療をする必要があります。2回流産を繰り返したら、検査を受けたほうがいいでしょう」
なお妊娠10週を超えると受精卵の染色体異常による流産率は下がるため、この時期以降の流産は親側に原因がある可能性が高くなる。初めての流産でも妊娠10週以降だった場合は、検査を受けたほうがいいという。
検査は、抗リン脂質抗体(後述)などを調べるための血液検査と、子宮の形に異常がないかを見る3D超音波検査などが基本。必要に応じて、さまざまなオプションの検査を追加していく。
基本的な検査は、ほとんどに健康保険が適用される。オプションの検査には保険適用外のものもあるが、費用を助成する自治体が増えてきている。
不育症の主な原因は「抗リン脂質抗体症候群」「もともと子宮の形が通常と異なる子宮形態異常」「夫婦いずれかの染色体異常」の三つだ。竹下医師は言う。
「この3大原因のほかにも、ホルモンの異常、糖尿病や甲状腺疾患、感染症、免疫異常などさまざまな原因があると考えられています。どの程度流産とかかわりがあるのか、研究中のものもある中で、3大原因は明らかに流産の引き金になる。ただしいずれかをもっているからといって、必ず流産するわけではありません」
最も頻度が高い抗リン脂質抗体症候群は、細胞膜を構成しているリン脂質に対する抗体(抗リン脂質抗体)が、体内に作られてしまう病気だ。抗リン脂質抗体には血液をかためる作用があるため、胎児に酸素や栄養を送る血液がとどこおったり血栓(血の塊)ができたりして、流産を起こしやすい。この病気が原因の不育症は、妊娠中期以降に子宮内胎児死亡を起こすことも少なくないという。
血液凝固にかかわる異常は、抗リン脂質抗体症候群以外にもいくつかある。血液中の第XII因子やプロテインS、プロテインCが少ない場合も血栓ができやすく、流産を引き起こす可能性がある。
このうち第XII因子欠乏症とプロテインS欠乏症は、日本人に多いことがわかっている。杉ウイメンズクリニック院長の杉俊隆医師はこう話す。
「健康な日本人でプロテインSが欠乏している人は約2%、欧米人の10倍です。さらに日本人の不育症患者の約4%に、プロテインSにかかわる遺伝子変異があることもわかってきました」
2019年、竹下医師や杉医師ら厚生労働省の不育症研究班は、こうした研究結果をもとに、欧米のガイドラインでは検査項目に入っていない第XII因子とプロテインSの活性を調べる検査を日本ではおこなうように提言した。現段階では、不育症との関連が明確とまでは言えないため、オプション検査として推奨されている。
「すべて欧米と同じにするのではなく、日本人特有のリスク因子を考えた検査や治療をおこなうことが不可欠です」(杉医師)
一方、検査をしても約65%の人は明らかな異常が見つからない。なぜこれほどまでに多いのか。「二つの可能性がある」と、前出の竹下医師は言う。一つめは、現在の検査法では検出できない未知の原因があるケース。そしてもう一つは赤ちゃん側の染色体異常による自然淘汰の流産が、たまたま2回3回と重なってしまった場合だ。
「女性の年齢が上がるほど、赤ちゃんの染色体の異常は増え、流産率も高くなります。流産率は30代からは年齢とともに上昇し、35歳で約20%、40歳で約40%、42歳では約50%になるという報告もあります。近年、日本人女性の妊娠年齢は高くなっているので、たまたま自然淘汰の流産が重なってしまうこともあるでしょう」(竹下医師)
竹下医師は、流産した赤ちゃんの絨毛(妊娠早期の胎盤の一部)から、染色体異常の有無を調べる検査を勧めている。検査で赤ちゃん側の染色体異常による流産だとわかれば、次の妊娠・出産への期待が持てるからだ。
「一度おなかに宿った命を失う不育症は、不妊とは違うつらさがあります。『また流産してしまうのでは』と怖くなって、次の妊娠に臨めない方もいらっしゃいます。しかし適切な対応によって、85%の人が赤ちゃんを産んでいると報告されています。諦めないことが大事。安心して次に進むために、不育症に詳しい医師に相談をしてください」(同)
(ライター・熊谷わこ)
引用元:
流産繰り返すも適切な治療で85%が出産へ 「不育症」治療でまずやってほしいこと(Yahoo!ニュース)