アレルギーを完璧に予防する方法はまだわかっていませんが、どうすれば起こりにくくなるのかは少しずつわかってきています。そこで、妊娠中から知っておきたい、アレルギーの最新の基本情報を小児アレルギーが専門の大矢幸弘先生に聞きました。2回にわけてお届けします。「妊娠中から知っておきたい! 赤ちゃんのアレルギー予防」第1回

アレルギーとは、特定の物質に免疫が過剰に反応してしまうこと
人間の体には細菌やウイルスなど、害を与えるものに対し闘って体を守ろうとする「免疫」という働きがあります。アレルギーは、本来体を守ろうとする免疫という働きが、無害なはずの特定の物質(アレルゲン)に対して、過剰に反応してしまうこと。

その結果、せき、くしゃみ、鼻水、下痢、かゆみなどの症状が現れます。重篤な場合は「アナフィラキシー」といって、血圧低下や呼吸困難などの危険な症状を引き起こしてしまうこともあります。

乳幼児に多い、「食物アレルギー」発症までのメカニズムを解説します
アレルゲンが体内に入ると、異物とみなして排除しようとする免疫機能が働き「IgE抗体」という物質がつくられます。IgE抗体がつくられることを「感作」といいます。

いったん感作が成立したあとに、再度アレルゲンが体内に入ると、アレルゲンとIgE抗体がくっつき、ヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、アレルギー症状を引き起こします。

【新事実1】離乳食より前に皮膚からアレルゲンが侵入することで「IgE抗体」がつくられる
以前は、食物アレルギーは、食べ物を口にすることで起こると考えられていました。でも、最近は、皮膚からアレルゲンが侵入することで「感作(かんさ)」が起こることがわかっています。

家族が卵や牛乳、小麦などを食べていると、室内の空気中にそれらのアレルゲンが存在し、赤ちゃんの皮膚に炎症があってバリアー機能が低下していると、侵入しやすくなってしまいます。

【新事実2】初めて体内に入る食べ物は口から入ったほうがアレルギーになりにくい!
トラブルがある皮膚など、口以外の炎症があるルートからアレルゲンが侵入すると感作が起こりやすいことがわかっています。人間はもともと食べ物を異物と認識せず、自分の体に取り込んで栄養にしようとするしくみが備わっているため、炎症がない健康な消化器官から初めて体内に入る食べ物を取り込んだ場合は感作が起こりにくくなります。
食物アレルギーを発症させないためにできることは?
完璧な予防法はありませんが、発症を防ぐためにできることはあります。とくに、離乳食を始める時期については、昔は、「離乳食を遅めに開始したほうがいい」という指導が行われていたこともありましたが、今は逆で離乳食を遅く始めたほうが食物アレルギーになりやすいことがわかっています。

離乳食は遅らせないほうがいい
初めて体内に入る食べ物は、皮膚から侵入するより先に、口から取り込んだほうが感作が起こりにくくなるので、離乳食を遅らせるのはアレルギー予防としては逆効果。生後5〜6カ月ごろから始めましょう。

スキンケアをしてバリアー機能を高めておくと予防に!
健康な皮膚には、外界の刺激を防御するバリアー機能が備わっているため、空気中にアレルゲンがあってもそう簡単に侵入はできません。でも、乾燥や炎症などのトラブルがあるとそのバリアー機能が低下し、アレルゲンが侵入しやすい状態に。普段から正しいスキンケアで肌を健やかな状態に整えておくと、アレルギー予防につながる可能性が高くなります。

監修/大矢幸弘先生 取材・文/渡辺有紀子、たまごクラブ編集部

アレルギー予防のカギは、“スキンケア”ということが新常識になってきています。赤ちゃんが生まれたら、毎日スキンケアをしてあげてくださいね。

また、「アレルギーが心配だからと、自己判断で離乳食開始を遅らせるのはやめたほうがいいでしょう。離乳食開始前にアトピー性皮膚炎を発症している場合や、アレルギーについて不安に感じることがある場合は、離乳食開始前にかかりつけの医師に相談をしてください」と大矢先生は言います。心配なことがあれば、自己判断をせず、医師に相談するようにしましょう。

参考/『たまごクラブ』2020年8月号「“わが子をアレルギーから守る!”新生児からの心得」

大矢幸弘先生(おおやゆきひろ)
Profile
国立成育医療研究センター・アレルギーセンター センター長。日本小児科学会および日本アレルギー学会の専門医・指導医。国立名古屋病院小児科、国立小児病院アレルギー科などを経て、2002年から国立成育医療センター第一専門診療部アレルギー科医長、2015年に国立研究開発法人への改組を経て現在に至る。小児アレルギー疾患のガイドライン作成に委員としてかかわる。

引用元:
妊娠中から知っておきたい! 赤ちゃんのアレルギー予防の最新情報(たまひよON LINE)