国内で、新型コロナウイルスワクチンの先行接種が始まり、間もなく1カ月になる。真っ暗なトンネルに光が差し込んだようなムードを感じる。記者の私は出産予定日を5月下旬に控える身。少なくとも今回の妊娠中に接種を受ける機会はないだろう。ただ、妊娠期間があと半年〜1年遅かったら…。接種するかどうか、相当悩んだはずだ。
医療関係者を皮切りに始まったワクチン接種。厚生労働省は、4月から重症化リスクの高い高齢者への接種を本格化させる方針だ。
一方、妊婦は現時点で優先接種の対象から外れている。予防接種法では、16歳以上に対して努力義務を定めているが、妊娠中は対象外とする閣議決定をした。治験データが少なく、有効性や安全性に関する情報が不十分であることが理由だ。日本では「妊婦は接種自体は可能であり、個々が接種のメリットとデメリットを検討した上で判断する」(厚生労働省)。
海外はどうか。慎重な対応を取る国は少なくない。いち早く接種を開始した英国でも、優先対象から除外。保健省は「まだ試験データがないから」と理由を挙げる。
米国の疾病センター(CDC)は少し違う。専門家がリスクが高くないと考えていることなどを示した上で「個人的な選択」。日本と同じような立場だろう。
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日本産婦人科感染症学会も提言をまとめている。「妊婦を除外しない」とした上で「妊娠(初期の)12週までの器官形成期は避ける」「重症化リスクの可能性がある肥満や糖尿病など基礎疾患がある人は接種を考慮する」などを盛り込んだ。
私自身に置き換えた。基礎疾患など、重症化につながりやすい要因は思い当たらない。薬や食物によるアレルギー反応の経験もない。それでも、妊婦や胎児に対する安全性が担保されたと言えない以上、抵抗がある。万が一、胎児に影響があったらと思うと身がすくむ。それが正直な思いだ。
気になるのは、基本的に「個人の選択」が迫られる中で、判断をする環境が整っているかどうかだ。
CDCはウェブサイトで、妊婦向けに現状を分かりやすい見出しの文章で伝え、接種の判断材料を提供している。私自身、妊娠中期に入るまでは、つわりによる体調不良で、長文や、難解な文章はなかなか頭に入ってこなかった。日本政府はウェブでワクチンに関する特設ページやQ&Aを設置している。妊婦や高齢者など対象を絞り込み、中身の濃さと分かりやすさを追求してほしい。
日本産婦人科感染症学会は、妊婦の接種後の経過観察として30分を推奨している。厚労省が医療機関向けに公開している手引きでは15分を示しているが、各会場で30分まで延長して待機できるのか。接種前後に胎児の様子を確認できるのか。
私が暮らす福岡市では「希望すれば15分以上の待機が可能」「妊婦は産婦人科のある基幹病院で接種できる」としている。このような対応は地域差なく実施されるのか。
各自治体では、オンラインや電話を通じた相談窓口の設置が進んでいる。個別に答えるだけでなく、集約して積極的に情報発信することで妊婦の不安を減らす一助になるのではないか。重要なのは納得して決断すること。そして、接種するかしないかにかかわらず、その決断が尊重される社会づくりだと感じている。
引用元:
悩ましい妊婦のワクチン接種 決断できる環境を(47NEWS)