男性不妊の原因が明らかな疾患の中で最も多いのが「精索(せいさく)静脈瘤(りゅう)」だ。精巣やその上の精索部に静脈瘤(静脈が拡張したコブ)ができ、腎臓の静脈から血液の逆流が生じることで、熱に弱い精巣の温度が上昇し、精巣機能が低下する。
一般男性でも15%、不妊男性の40%以上にみられ、自覚症状はない場合が多いが、悪化すると静脈瘤のできた側(約90%は左側)の陰のうが腫れたり、デコボコしたりする。精液所見の悪化、精巣萎縮、精子のDNA損傷、男性ホルモンの低下などを引き起こす。
精液検査で「乏精子症・精子無力症」が分かったら、最初に疑い男性不妊を専門とする泌尿器科医(生殖医療専門医)に診察してもらった方がいい。東邦大学医療センター大森病院・リプロダクションセンター(泌尿器科)の永尾光一教授が言う。
「精索静脈瘤は進行性の病気なので、2人目不妊の78%の原因になっています。しかし、手術をすれば約8割の人は精液所見が改善するので、自然妊娠も可能です。また、最終的に人工授精・体外受精・顕微授精などの婦人科的治療を行うにしても、精索静脈瘤を治しておいた方が、その成功率は高まります」
精索静脈瘤手術は、2018年4月から手術用顕微鏡を使った「顕微鏡下手術」が保険適用になっている。いくつかある術式の中には腹腔鏡手術などもあるが、一般的には「顕微鏡下高位結紮(けっさつ)術」と「顕微鏡下低位結紮術」が行われている。
手術内容は、腎臓と精巣の間の精巣静脈を糸でしばって血流を遮断(結紮)する。「顕微鏡下高位結紮術」は、ヘソ脇あたりの腹部を4〜5センチ切開し、腎臓に近い方の静脈をしばる方法。「低位結紮術」は、陰のうの付け根あたりを2〜3センチ切開して、精巣に近い方で静脈をしばる。手術時間はどちらも1時間ほどだ。
しかし、顕微鏡下高位結紮術は全身麻酔で3泊4日ほどの入院が必要。顕微鏡下低位結紮術は局所麻酔なら日帰りも可能で、その場合は自由診療で行っている施設が多い。何が違うのか。
「顕微鏡下低位結紮術は非常に難しいので、顕微鏡手術に熟練した医師でなければ、理想的な手術はまずできません。理想的な手術とは、大事な動脈・リンパ管・神経をすべて温存し、逆流静脈をすべてしばる、別の逆流ルートである外精静脈もしばる方法です。この理想的な手術が難しいため術者によって、再発や合併症が起こる確率にばらつきが多いのです。顕微鏡下高位結紮術はしばる静脈の数が少なく、リンパ管温存などの手技が簡単です。技術レベルが相当高い医師が担当するなら顕微鏡下低位結紮術でもいいですが、保険診療で平均的な治療成績を望むなら顕微鏡下高位結紮術の方が無難です」
顕微鏡下高位結紮術は、保険診療なので手術費用は、3割負担の自己負担は14万〜17万円くらいになる。手術前検査も保険診療となる。保険診療で低位結紮術を行っている場合も手術費用は同じだ。自由診療で日帰りの顕微鏡下低位結紮術を行っている場合の手術費用は、施設によって異なるが、だいたい25万〜40万円程度になる。手術前検査や麻酔費用などは別途必要になる。
得意とする術式は施設で異なるので、選択肢は泌尿器科医に詳しく説明してもらおう。 (取材・新井貴)
■永尾光一(ながお・こういち) 1960年生まれ。昭和大学で形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻。両方の診療部長を経験し、二つの基本領域専門医を取得。2007年東邦大学医学部准教授(泌尿器科学講座)、09年現職。日本性機能学会理事長。日本生殖医学会副理事長。日本メンズヘルス医学会理事。NPO法人男性不妊ドクターズ理事長など。
■男性向け医療・健康情報サイト「DANTES」(dantes.jp/)でも夕刊フジと連動して「男性不妊」や「男の元気」に関する情報提供を行っています。閲覧は無料です。
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引用元:
【ここまできた男性不妊治療】顕微鏡下手術で改善する「精索静脈瘤」 精液検査で「乏精子症・精子無力症」が分かったら診察(ZAKZAK)