国内の夫婦の5・5組に1組が不妊の検査や治療を受けている。その約半数は男性側にも原因がある。男性不妊治療は、どんなことが行われるのか。先月の掲載(第1部)に続き、東邦大学医療センター大森病院・リプロダクションセンター(泌尿器科)の永尾光一教授に、5回にわたり解説してもらう。

 不妊治療で大切なことは、女性が検査を受けるのと並行して男性も検査を受けること。それも女性が35歳を過ぎると妊娠する確率が急激に低下するので、女性が30歳を過ぎる頃までには検査を受けておくべきだ。

 男性側に原因があるかどうか調べる検査には、「精液検査」と「泌尿器科的検査」に分けられる。精液検査は精液の状態をみる検査で、受診した男性が必ず受ける基本的な検査になる。

 「精液検査は、精液量、精子濃度、運動率、運動の質、精子の形態などを調べます。検査前の3日間くらいは禁欲(射精しない)してもらい、検査当日に用手法(マスターベーション)で容器の中に射精してもらいます。採取した精液を女性が婦人科に持ち込む検査の仕方もありますが、持ち込むまでの時間や温度で精液の状態が悪くなる場合があります。精液の採取は、医療機関で行うのが望ましいです」

 男性不妊の専門施設や専門外来がある施設では、AVなどを鑑賞しながら精液を採取する専用の個室(採精室)が設けられている。そこに入室して採精するので、抵抗感は少ないはずだ。

精液の状態の評価は、WHO(世界保健機関)の下限基準値(別項)を目安に行われる。ただし、精液の状態は、その日の体調によっても変化する。1回の検査結果がすべてではなく、精液の所見が悪ければ再検査する場合もあるという。

 「国内の男性不妊の診療が不十分なのは、精液検査しか行われないケースがあるからです。女性が通院する女性不妊専門の施設で、パートナーの男性側が受けられるのは精液検査までです。精液の所見が悪くても、男性不妊を専門とする泌尿器科医(生殖医療専門医)がいなければ、泌尿器科的検査が行われないので原因が分かりません。それで体外受精などの生殖補助医療が先行されてしまう傾向があるのです」

 つまり、精液の状態が悪い原因を見つけ、治療につなげるには泌尿器科的検査が不可欠ということ。主に、次のような検査が行われる。

 (1)「診察・問診」…不妊症に関連する病気の既往の有無、勃起や射精などの状況の確認。外陰部の診察・触診、精巣サイズの測定など。

 (2)「超音波(エコー)検査」…陰のうに超音波を当てて観察する。男性不妊の最大原因である精索静脈瘤の診断に最も有用な検査になる。

(3)「内分泌検査(採血)」…血液中の男性ホルモンや性腺刺激ホルモンの数値を調べる。

 また、必要であれば「染色体・遺伝子検査(採血)」も行われる。これらの検査(1〜2回の受診)で、だいたい原因が分かるという。(取材・新井貴)

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 ■永尾光一(ながお・こういち) 1960年生まれ。昭和大学で形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻。両方の診療部長を経験し、二つの基本領域専門医を取得。2007年東邦大学医学部准教授(泌尿器科学講座)、09年現職。日本性機能学会理事長。日本生殖医学会副理事長。日本メンズヘルス医学会理事。NPO法人男性不妊ドクターズ理事長など。

引用元:
【ここまできた男性不妊治療】男性側の不妊検査、泌尿器科的検査が不可欠 国内では精液検査のみで診療が不十分な場合も (ZAKZAK)