第三者から卵子や精子の提供を受ける生殖補助医療で生まれた子に関し、親子関係を明確にする民法の特例法が成立した。

 卵子提供では出産した女性を母親とし、精子提供では同意した夫を父親とする。法整備が20年来必要と言われた問題に一つのルールができたことは一歩前進だ。

 しかし国会での審議は不十分で、医療技術の規制などに関する結論は後回しにされた。多くの重い課題が残されている。

 国会は、幅広い議論を十分に行い、生殖補助医療の環境整備を急ぎ図らねばならない。

 国内では、1948年から不妊に悩む夫婦に匿名を原則とする提供精子による治療が行われ、これまでに1万人以上が生まれたとされる。卵子提供も行われてきた。

 ただ、これまでの民法は生殖補助医療を想定せず、過去には精子提供で誕生した子の親子関係を争う訴訟も起きた。

 2000年ごろから、旧厚生省の委員会や法務省の部会などで法整備の必要性が指摘されてきた。

 今回与野党の共同提出でできた特例法には、生まれた子の法的立場を安定させる意義はある。

 ただ、生殖補助医療をどこまで認めるかや子の出自を知る権利の扱いは、十分な議論がないまま2年後をめどに検討するとされた。

 これでは懸案を棚上げしたにすぎない。

 先送りされた課題の一つが、夫婦の受精卵を第三者に産んでもらう代理出産の是非だ。

 日本産科婦人科学会は禁じるが、海外での実施例はある。米国では代理母が子の引き渡しを拒否するトラブルが起きている。

 卵子や精子の売買にどう対応するかも論点だ。民間の卵子・精子バンクが増えているが、商業ベースが過ぎれば優生思想につながりかねないとの懸念は強い。

 技術の進歩に法整備が追いつかないまま、既成事実化が進んでいると言える。危うさを感じる。

 どんな技術を、誰に、どういう条件で認めるのか。生命倫理にも関わる根源的な問いに、与野党は臆せず向き合わねばならない。

 倫理や宗教など価値観の問題を含むだけに、議論には幅広い専門家の参加が必要だろう。

 子が出自を知りたいと願うのは自然な感情だ。一方で、将来的な情報開示の可能性を示したとたん、精子提供者が確保しにくくなったケースもある。

 議論を深め、生まれる子の福祉と医療の両立を目指してほしい。


引用元:
生殖補助医療法 重い課題が残っている(北海道新聞)