妊娠することで多発性硬化症(MS)の発症が3年以上遅れたという結果が、「JAMA Neurology」9月14日オンライン版に掲載された論文で明らかにされた。  

ロイヤル・メルボルン病院(オーストラリア)のAi-Lan Nguyen氏らは、4件の3次病院(チェコ共和国1件、オーストラリア3件)の外来でMSの治療を受けた女性を対象に、妊娠とclinically isolated syndrome(CIS)の発症年齢との関連を検討するため、多施設共同コホート研究を実施した。全対象者について、2016年9月1日〜2019年6月25日までの妊娠・出産(それぞれの妊娠における妊娠期間、出産日、母乳栄養期間)に関するデータを収集した。CISの発症日、生年月日、性別、臨床症状の発現日、およびExpanded Disability Status Scale(EDSS)のスコアなど、研究開始以前に集積されたデータは、MSBase(MS患者のデータを長期にわたって前向きに収集している国際的なデータベース)から抽出した。  

本研究に組み入れられた女性のMS患者2,557例におけるCISの平均発症年齢(標準偏差)は31.5(9.7)歳であった。これらの女性患者のうち、1回以上の妊娠歴があった患者は1,188例(46%)、1回以上の出産歴があった患者は1,100例(43%)であった。妊娠歴および出産歴のある女性では、妊娠歴のない女性よりもCISの発症リスクが低く〔ハザード比(HR)0.68、95%信頼区間(CI)0.62〜0.75、P<0.001〕、初回発症の年齢が中央値で3.3歳(95%CI 2.5〜4.1)高かった。出産歴のある女性では、出産歴のない女性よりもCISの発症リスクが低く(HR 0.68、95%CI 0.61〜0.75、P<0.001)、初回発症の年齢が中央値で3.4歳(95%CI 1.6〜5.2)高かった。ただし、妊娠回数や出産回数が増えるとCISの発症がそれに比例して遅延するという関係は認められなかった。  

著者らは、「今回の研究結果から、妊娠・出産によってCISの発症が遅れることが判明したが、妊娠・出産の回数が増えるほどCISの発症が遅れるという関係は認められなかった。妊娠・出産とMSの発症時期との関連の背景にある機序を解明するため、研究を続ける必要があるだろう」と述べている。

引用元:
妊娠すると多発性硬化症の発症が遅くなる (HealthDay Japan)