ホルモン補充療法での乳がんリスク、最新データでは?
更年期のホルモン補充療法(HRT)は乳がんの発症リスクの増加と関連するという研究結果を、英ノッティンガム大学のYana Vinogradova氏らが報告した。
ただし、乳がん発症リスクは、HRTで使用したホルモン製剤の種類や、HRTを実施した時期や期間によって異なるという。研究結果の詳細は、「The BMJ」10月28日オンライン版に掲載された。
HRTは、ホットフラッシュや寝汗などの更年期症状を緩和するために行われる。治療には、エストロゲン(卵胞ホルモン)単独、またはエストロゲンとプロゲストーゲン(黄体ホルモン)の組み合わせの内服薬、貼り薬、塗り薬などがある。
これまでの研究では、長期にわたるHRTが乳がんリスクの上昇と関連することが示されている。特に2019年に発表された大規模メタアナリシスでは、HRTに関連する乳がんの発症リスクが予想よりも高いことが報告され、注目を集めた。
しかし、HRTで用いるホルモン製剤の種類や治療期間によるリスクの違いについては、依然として不明瞭である。
そこで、Vinogradova氏らは、英国の病院データなどに関連付けられた2種類のプライマリケアデータベースを利用して、HRTで使用される個々のホルモン製剤と乳がんの発症リスクとの関連を評価する研究を実施した。
対象者は、1998〜2018年の間に初めて乳がんと診断された50〜79歳の女性9万8,611人、および年齢と一般診療をマッチさせた、乳がんを発症していない女性45万7,498人である。
同氏らは、喫煙、飲酒、併存疾患、家族歴などの関連因子を調整した上で、HRTの種類(エストロゲン単独療法、またはエストロゲン・プロゲストーゲン併用療法)、HRTの実施時期〔最近(1〜5年前)、または過去(5年以上前)〕、および治療期間〔短期(5年未満)、または長期(5年以上)〕別に、乳がんの発症リスクについて分析を行った。
その結果、HRT未経験の人に比べて、HRTの治療経験は乳がん発症リスクの増加と関連することが明らかになった。
リスク増加が大きかったのはエストロゲン・プロゲストーゲン併用療法であったが、エストロゲン単独療法でもわずかなリスク増加が認められた。
例えば、最近、長期にわたりHRTを行った場合、行っていない場合と比べて、乳がん発症リスクはエストロゲン単独療法で15%、エストロゲン・プロゲストーゲン併用療法で79%増加した。
過去のエストロゲン単独療法の長期実施、および過去のエストロゲン・プロゲストーゲン併用療法の短期実施とリスク増加との間には関連が認められなかった。
その一方で、過去のエストロゲン・プロゲストーゲン併用療法の長期実施では、リスク増加が認められた(16%)。
こうした結果を受けてVinogradova氏らは、「今回の研究により、HRTに関連する乳がんリスク増加の程度は、2019年の研究で示されたほど高くはないことが明らかになった。また、HRT中止後に乳がんリスクが低下するスピードは、これまでに報告されている研究データよりも速いことも判明した」と述べている。
ただ、この問題に関しては、まだはっきりとしたことは言えないというのが専門家らの見解だ。今回の研究には関与していない、米メイヨー・クリニック女性健康センターのStephanie Faubion氏は、「この問題は極めて複雑だ。HRTの安全性を保証できる人はいないだろう」と話す。
2002年に発表された女性の健康イニシアチブ(WHI)の大規模臨床試験の結果では、HRTによって心疾患や血栓症、乳がんのリスクが上昇することが示された。
その一方で、エストロゲン単独のHRTを受けた女性では、乳がんの発症リスクが低下する可能性も示唆された。
この結果が報告されて以降、HRTの処方件数は減少したが、その後に発表された研究データは、この問題をさらに複雑にした。
WHIの主な対象者は60歳代前半の女性であったが、最近の研究では早期更年期に相当する60歳を迎える前にHRTを受け始めた女性では、HRTに伴うリスクは低く、むしろ心疾患予防に役立つ可能性が示されている。
こうしたデータは医師や患者を混乱に陥れることになったが、Faubion氏は、「最終的にはほとんどの50歳代の女性にとってHRTの有益性はリスクを上回る」と指摘している。
引用元:
更年期のホルモン補充療法は乳がんの発症リスク増加と関連、英ノッティンガム大学研究報告(@DIME)