鹿児島市の40代女性から「子どもの夜泣きを治す方法を教えて」という声が届いた。同市の夫婦が2人の子どもを自宅に11日間放置した事件の裁判で、有罪判決を受けた母親も夜泣きを理由の一つに挙げた。育児放棄に至るかは別にしても、夜泣きに悩む親は多い。子育て真っ最中の女性小児科医に、自身の経験を踏まえアドバイスを聞いた。

 鹿児島大学病院・柿本令奈医師(39)は長男の出産直後から夜泣きに悩まされた。「1カ月過ぎると徐々に寝るようになったが、復職後はまた1時間おきに泣くようになった。環境の変化を感じたのだろう」と振り返る。

 体の成長に脳の成長が追い付けば落ち着くと信じて過ごした。母乳をやめると夜泣きは少し減った。近く2人目出産のため休職中の柿本医師は「顔色を見て、おむつやミルクのタイミングでなければ、泣いていてもしばらく様子を見ていい」。

 2児を持つ40代の医師は「生活リズムを変えないよう努めた。決まった時間に入浴、食事、消灯し、横になったらディズニーのオルゴールをかけて“おやすみモード”をつくる。今から寝るという暗示をかけるイメージ」と助言する。

 「3人の子どもで個人差があった」と言うのは30代医師。「長男と次男は1歳半前後で卒乳するとなくなったが、長女は激しくなり、指しゃぶりも始まった。一律のアドバイスは難しい。ただ一つ言えるのは、いつか終わりが来る」

 厚生労働省は対処法として(1)欲しがっていることの確認(ミルク、おむつ、抱っこ)(2)おなかの中を思い出させる(おくるみで包む、ビニールをくしゃくしゃする音を聞かせる)(3)車に乗せて心地よい振動を与える−などを例示。強く揺さぶったり、口をふさいだりせず、「安全な場所に寝かせて、その場を離れる。自分がリラックスしてから様子の確認を」と呼び掛ける。

 柿本医師は「小児科医の私もオロオロした。悩みはみんな同じ。夫のサポートで、睡眠をとったり外出したりもした。罪悪感を抱く必要はない。リフレッシュの時間があると余裕が出る。1人で抱え込まず相談してほしい」と話した。

 かかりつけ医のほか、相談窓口として各自治体の子育て世代包括支援センター、保健所などがある。

■「入眠儀式」大切に(池田病院・池田琢哉院長)
 夜泣きに関する親の不安や心配に対応できるよう、乳幼児健診で医師や心理士、看護師などが相談に応じている。夜泣きは個人によっても、月齢によっても原因や症状が違う。これが正解という対処法はないのが難しい。

 一般的に生後1カ月は睡眠と覚醒が半々。少しずつリズムができてきて、4カ月ぐらいで昼間に起きている時間が長くなる。睡眠は成長に応じてなだらかに減る。
 大切なのは規則正しい生活リズム。入浴、食事、睡眠などの時間を決め、順序よくして、子どもが睡眠をとりやすくする。絵本を読み、部屋を暗くするなどの「入眠儀式」も効果的だと思う。

 5歳児で20〜40%は睡眠の問題を抱えているという報告もある。夜泣きにはじまる睡眠の問題は、親の育児ノイローゼ、うつによる孤立につながりかねない。親の孤立は社会的な問題。病院や行政が連携し、子育てに悩む親を積極的に支援することが大切になる。

引用元:
子どもの夜泣き対処法は? 「悩みは同じ」子育て中の小児科医がアドバイス(南日本新聞)