子宮のないメスのサルに別のサルから子宮を移植し、出産させることに世界で初めて成功したと慶応大学などの研究グループが発表しました。研究グループは、生まれつき子宮がない女性に対し、国内で初めてとなる子宮の移植を目指すとしています。

これは、慶応大学の木須伊織特任助教らの研究グループがオンラインで記者会見を開いて発表しました。

グループでは、子宮を取り除いたメスのカニクイザルに、免疫のタイプが近い別のサルの子宮を移植したあと、受精卵を子宮の中に入れました。このサルは、移植からおよそ3年余りたったことし5月、3回目の妊娠で、赤ちゃんを出産したということです。

研究グループによりますと、人に近い霊長類のサルで、別のサルから子宮を移植して出産に至ったのは世界で初めてだということです。

研究グループでは、生まれつき子宮がない「ロキタンスキー症候群」の女性などに対し、親族などから提供された子宮を移植する国内で初めての臨床研究の実施を目指しています。

子宮移植では、移植後に投与される免疫の働きを抑える薬剤が長期的に胎児にどのような影響を与えるか分かっていないほか、生命の維持には関わらない理由で子宮を提供する健康な女性に、身体的、精神的な負担を与えてよいのかなど、医学的にも倫理面でも課題があり、日本医学会で議論が進められています。

木須特任助教は「子宮がない女性には、妊娠・出産の選択肢が全くない。研究を進めて、子宮移植という選択肢を提示できるようにしたい」と話しています。

子宮移植とは
子宮移植の対象となるのは、生まれつき子宮がない「ロキタンスキー症候群」の患者や、がんなどで子宮を摘出した20代から30代の女性で、国内におよそ6万人いると見られています。

子宮の移植は、国内では行われていませんが、慶応大学の研究グループによりますと、2014年に初めて、スウェーデンで子宮の移植を受けた女性が出産して以降、これまでにアメリカやチェコなどで80例余りの手術が実施され、少なくとも37人の赤ちゃんが生まれているということです。

子宮移植では、多くの場合、親族などから子宮の提供を受け、妊娠と出産を目指します。移植が行われると、拒絶反応が起きないよう、免疫の働きを抑える薬剤の投与を受けながら経過を確認したうえで、受精卵を子宮に入れて妊娠を促します。そして、おなかの中で赤ちゃんが育つと、帝王切開で出産を行い、その後、再び手術を行って移植した子宮を取り除きます。

一方で、海外では流産したケースや移植した子宮がうまく定着せず、再び取り出したケースも報告されています。

また、海外では脳死になった人から子宮の提供を受けたケースも報告されています。
医学的な課題や倫理面での課題も
人での子宮の移植には、子宮を提供するドナーの安全などの医学的な課題や、生命の維持には関わらない理由で健康なドナーから子宮を摘出することなどに倫理面での課題があると考えられています。

海外では、2014年にスウェーデンで、子宮の移植手術を受けた30代の女性が世界で初めて出産するなど、これまでに複数の実施例がある一方、移植を受けたあと流産したケースや移植した子宮が定着せずに再び摘出手術を受けたケースも報告されています。

日本国内では、慶応大学の研究チームが実際に子宮移植を行う臨床研究の計画を関連する学会に提出していて、これを受けて医学関係の学会で作る日本医学会は去年4月、移植医療や生殖医療、それに、法律や生命倫理などの専門家でつくる検討委員会を設け、実施の是非などについて1年以上にわたって議論を行ってきました。

検討委員会の中で、医学的な課題として挙げられているのは、健康なドナーから子宮を摘出する際の手術法の安全性や、子宮を移植して妊娠した場合に、免疫を抑える薬剤が患者や胎児に与える長期的な影響についてまだ分かっていない点などです。

また、倫理面では、生命の維持には関わらない理由で子宮を提供する健康な女性に、身体的、精神的な負担を与えてよいのかということや、患者の家族や親族が子宮を提供することが考えられる中、ドナーが強制ではなく、自由な意思決定に基づいて提供の意思を示せるかどうかも課題になっています。

さらに、検討委員会では、子宮移植を受けることが想定されている、先天的に子宮のない「ロキタンスキー症候群」の患者に対して、医師からの説明やケアなど、医療的な支援が十分に行われていないという指摘もあり、こうした点を解決すべきだといった意見なども出ているということです。

検討委員会は移植を望む患者などにヒアリングを行っており、子宮移植の実施の是非を含めて、議論の結果について報告書をとりまとめることにしています。

引用元:
子宮移植のサル 妊娠出産に成功 慶応大学などの研究グループ(NHK)