働く女性は加齢による記憶力低下が遅い?

若年成人期から中年期にかけて収入を伴う仕事に就いていた女性は、その後、年齢を重ねても、記憶力が衰えにくい可能性を示す研究結果が明らかになった。米ボストン・カレッジ社会福祉学分野のErika Sabbath氏らが実施したこの研究の詳細は、「Neurology」11月4日オンライン版に掲載された。

この研究は55歳以上の米国人女性6,189人(研究開始時の平均年齢57.2歳)を対象に実施された。対象者は16〜50歳の間に雇用状況、婚姻状態、子どもの有無について報告したほか、2年ごとに記憶力を調べる検査を受けた。追跡期間は平均12年間だった。対象者のうち、4,326人は既婚で就労中の母親、530人は就労中のシングルマザー、319人は非就労のシングルマザー、526人は専業主婦だった。Sabbath氏らは集めたデータを基に、仕事と家族の状況と記憶力低下との関連を検討した。

その結果、記憶力テストの平均スコアは、55〜60歳では全対象者で同様であったが、60歳を過ぎると、有償労働に従事していた女性では、非就労の女性に比べて、スコアの低下速度が遅いことが明らかになった。記憶力の低下速度は、専業主婦よりも就労中のシングルマザーの方が遅かった。年齢や教育歴、社会経済的な状況などの因子を調整すると、全体としては、出産後も働いていた女性と比べて、出産後に仕事をやめた女性では、60歳から70歳までの記憶力の低下率が平均で50%高いことが判明した。

シングルマザーの記憶力に関する結果は、Sabbath氏にとっても予想外だった。過去の研究では、シングルマザーはストレスや経済的な困難に直面する頻度が高いことや、既婚者と比べて心疾患などに罹患しやすいことが示されているからだ。同氏は、「働くことが、認知機能をストレスから守っている可能性がある」と推測している。

今回の研究結果について専門家らは、「有償労働への従事が脳の健康状態を保持することを証明したものではない」と指摘する。その一方で、「従来の研究で、精神的・社会的な刺激が記憶力の低下を抑制するとの結果が示されている。有償労働にはこれらの刺激がつきものであり、この研究で示された仕事と記憶力との関連は理にかなっている」との見方を示している。

Sabbath氏は、「精神力を求められる職務や、他者との良好な関係の維持といった、仕事に伴うさまざまな要素が脳に良い影響を与えるのではないか」との見方を示している。また、「仕事による健康への有害な影響に目が行きがちだが、今回の研究から、仕事に健康上のメリットがある可能性が示された」と述べている。

一方、今回の研究には関与していない、米国神経学会(AAN)フェローのThomas Vidic氏は、「これまでの研究で、健康的な食事や運動、禁煙、高血圧や糖尿病などの心血管リスク因子など、さまざまな要因が記憶力の低下や認知症のリスクに関係していることが示されている」と説明。また、「有償労働だけでなく、ボランティア活動や地域活動などを通じても、精神的・社会的な刺激を得られる可能性がある」との考えを示している。その上で、「この研究結果から言えるのは、若年成人期や中年期をどのように過ごしたかが後の健康状態に影響するということだ」と述べている。(HealthDay News 2020年11月4日)

▼外部リンク
・Association of work-family experience with mid- and late-life memory decline in US women
HealthDay



引用元:
働く女性は加齢による記憶力低下が遅い?(QLife Pro)