母乳を与えることができない親に代わり、低体重新生児にボランティアで寄せられた母乳を提供する「母乳バンク」という取り組みがある。この取り組みに賛同し、母乳を提供したいという人のドナー登録施設として、藤田医科大病院(愛知県豊明市)が中部地方で初めて認定された。

 国内で唯一母乳バンク活動に取り組む「日本母乳バンク協会」(東京都中央区)が認定した。母乳バンクは、海外では国営もあるなど一般的だが、国内では2017年に設立された同協会のみで、認知度も低く普及していないのが現状。同協会は、無償提供されたドナーミルクを管理しており、細菌検査や低温殺菌処理を行った上で、必要な医療施設に送っている。

 ドナーミルクの提供対象は、早産により約1500グラム以下と通常よりも小さく生まれた新生児。低体重の新生児は腸の発達が未成熟のため、粉ミルクなどの人工乳を与えると、生死に関わる病気でもある「壊死(えし)性腸炎」にかかりやすい。これに対し、母乳であるドナーミルクを与えると、壊死性腸炎のリスクを減らすことができる。しかし、薬の服用などで母乳を与えることができない母親もいるため、ドナーミルクが必要とされている。同協会では、あらかじめ母乳が多く出る女性にドナーになってもらうよう呼び掛けてきた。

 ドナー登録できるのは、産後6カ月以内の女性。登録を希望する人は同協会に申し込んだ上で、問診や血液検査などを行う医療機関「ドナー登録施設」を紹介してもらう。検査に合格した上で、自宅で母乳をとり、同協会に送付する。これまではこのドナー登録施設が中部地方になかったたため身近ではなかったが、藤田医大病院が認定されたことで近県からのドナー登録増加にも期待できる。

 藤田医大病院では、これまでに7人がドナー登録した。同大医学部小児科学の宮田昌史准教授は「ドナーミルクの提供体制が間に合わず、使える医療機関も県内で限られている。将来的には地域ごとに母乳バンクができるのが望ましい。登録施設となったことで、母乳バンクの認知度が広がってほしい」と話している。

 同協会では、現在はドナー登録は中止しているが、11月中旬以降に再開予定。問い合わせは同協会のホームページを参照。


引用元:
藤田医大病院が「母乳バンク」ドナー登録機関に 中部地方初 低体重新生児を支援(毎日新聞)