普段、うつぶせで寝るくせがある人もいますよね。でも、お腹が圧迫されそうなこの寝方、妊娠したら、いつまで続けてよいのでしょうか。妊娠中におすすめまたは注意が必要な寝姿勢とともに解説します。

妊娠初期ならうつぶせに寝ても大丈夫?


妊娠中、お腹が大きくなってくると、うつぶせで寝ること自体が苦しくなってきますが、まだお腹が大きくなっていない妊娠初期は、うつぶせに寝ても問題はないのでしょうか。


■妊娠初期の母体の様子


まずは妊娠初期の身体の様子について、確認しておきましょう。

妊娠初期は、見た目には非妊娠時とほぼ変わりありませんが、体内では少しずつ変化が始まっています。例えば血液量、中でも血液の液体成分(血漿)の増加はすでに始まっています。これからどんどん大きくなっていく赤ちゃんの成長を支えるために、それまでよりも多くの血液が必要だからです。

そのほかには妊娠5週ころから「つわり」の症状が出始めたり、神経過敏になったり、感情の浮き沈みが激しくなったりすることもあります。

妊娠初期の後半〜中期のはじめにあたる「妊娠4ヶ月(12〜15週)」には、子宮は「グレープフルーツくらい」の大きさになり、お腹のふくらみがわかるようになってきます[*1]。


■うつぶせに寝ても大丈夫? 赤ちゃんへの影響は?


そんな妊娠初期、いくらまだお腹が目立たないとはいっても、「うつぶせになると赤ちゃんがつぶされてしまうのでは」と思うこともあるでしょう。

結論からお話しすると、お母さんがうつぶせになっても、赤ちゃんがつぶれてしまうということは、まずありません。なぜならば赤ちゃんはお母さんのお腹の中で、たくさんのクッションに守られています。

まずは子宮の中の「羊水」。子宮の中は羊水で満たされていて、いわば水風船の中に赤ちゃんが浮いているような状態になっています。また、子宮はお母さんの「皮下脂肪」にも守られています。

以上のことから、お母さんがうつぶせに寝ても、妊娠初期の赤ちゃんへの影響を心配する必要はありません。安心してください。


■うつぶせで寝られるのはいつまで?


そうは言っても、お腹が大きくなってからうつ伏せになると苦しいものです。「この時期までなら、うつぶせ寝をしてもOK」という明確な基準は、とくにないので、うつぶせになっても息苦しさを感じないようであれば、妊娠中でもうつぶせ寝をして問題ないでしょう。就寝中は寝返りをするので、苦しくなったら自然とうつぶせから体位が変わるはずです。

なお、寝る時の姿勢をサポートしてくれる妊婦さん向けのグッズも販売されています。寝入るのが難しいようなら、それらを使ってみてもよいでしょう。


妊娠中に楽な寝姿勢・注意すべき寝姿勢


では、妊娠中はどんな寝姿勢を取るのがよいのでしょうか。おすすめは「シムス位」と呼ばれる姿勢です。


■大きなお腹でも楽な「シムス位」


「シムス位」は、妊婦さんの楽な寝姿勢として紹介されることの多い姿勢です。身体の左側を下にして、ややうつぶせ気味の横向きになり、下になった左足を楽な位置へ伸ばします。

シムス位は、お腹が大きくなってからも重さを感じにくく、足もリラックスしやすいといわれています。また、お腹を守っているようなポーズになるため、仰向けなどと比べると安心感を得やすいことも魅力です。

シムス位をとる際、抱き枕などを利用してもよいでしょう。詳しいやり方は下記の記事を参照してください。


関連記事:



【医師監修】シムス位は妊娠中におすすめ? 妊婦にシムス位がおすすめの理由

お腹が大きくなっていく過程では、体を休めるときや寝るときに楽な姿勢が普段とは違ってくることがあります。そこで楽な寝姿勢として世界中で知られるという「シムス位」について調べてみました。



■妊娠中期以降の「仰向け寝」は要注意


妊娠中はシムス位とは逆に、注意すべき寝姿勢もあります。それは「仰向け」の姿勢です。一見すると楽そうに見えるこの姿勢が、妊娠中はなぜ要注意なのでしょう。

じつはお腹が大きくなってくる妊娠中期以降では、仰向けの姿勢をとると子宮の重みが背骨の右側を通る下大静脈という大きな血管を圧迫してしまうことがあります。すると、それによって静脈の血流が妨げられ、「仰臥位低血圧症候群(ぎょうがいていけつあつしょうこうぐん)」というトラブルを引き起こしてしまうことがあるのです。

仰臥位低血圧症候群はその名の通り、仰臥位=仰向けになることで下大静脈が圧迫され、低血圧を引き起こすこと。お腹が大きくなる妊娠中期以降に比較的よく見られるトラブルです。

血圧が急に下がることで意識障害、不整脈の一種である頻脈、悪心といった症状が現れることがあります。中には、産婦人科の診察室で待っているわずかな間、仰向けになっていただけで冷や汗や吐き気などが生じることも。

もしも仰向けになった場合、上記のような症状や寝苦しさを感じたら、身体の左側を下にして横を向く姿勢(左側臥位・ひだりそくがい)をとりましょう。静脈の血流が改善すると、症状は速やかに回復します。

症状が改善されないときは、仰臥位低血圧症候群とは別の原因がある可能性も考えられます。かかりつけの産科に連絡をし、判断を仰ぎましょう。


まとめ



うつぶせ寝でもシムス位でも、実際にどのような姿勢で寝るのが楽かは人によって違います。いろいろな姿勢を試し、自分にとって楽な寝姿勢を見つけられるとよいですね。








この記事の監修ドクター

産婦人科専門医 齊藤英和先生


梅ヶ丘産婦人科勤務、国立成育医療研究センター臨床研究員、神戸元町夢クリニック顧問、浅田レディースクリニック顧問、昭和大学医学部客員教授、近畿大学先端技術総合研究所客員教授、1 more baby 応援団理事、ウイメンズヘルスリテラシー協会理事。山形大学医学部卒業後、同大学、国立成育医療研究センターを経て現職。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖専門医、医学博士




(文:山本尚恵/監修:齊藤英和先生)

※画像はイメージです


参考文献
[*1]「目でみる妊娠と出産」文光堂



※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

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引用元:
【医師監修】妊娠初期のうつぶせ寝は危険? 赤ちゃんへの影響とは(マイナビウーマン)