■早期発見に影響

 新型コロナウイルスの影響で、富山県内の市町村が実施しているがんの集団検診の受診者数が低迷している。「緊急事態宣言」が出された4、5月には、各市町村が検診を休止。5月下旬以降に順次再開されたが、密集を避けて感染リスクを抑えるため、受け入れ人数の制限を余儀なくされている。受診者数が伸びない状況に、がん治療に当たる医師らは「早期発見に影響が出る」と指摘している。(藤田愛夏) 

 県健康増進センター(富山市)は、人口規模の大きい富山、高岡両市の一部と、残る県内13市町村の集団検診を受託している。4〜7月の集団検診の受診者数は胃がん約2千人、子宮がん約1400人、乳がんが2千人で、休止期間もあったため、それぞれ前年同期より約8割減少した。

 富山市は、8月になってようやく集団検診を開始した。例年より約2カ月半遅いスタートで、胃がんと肺がんの検診は山間部など医療機関が少ない地域に限定。8月末まで約1カ月間の胃がんの受診者数は約70人にとどまり、前年同時期の約5千人から激減した。


 8月下旬に同市中央福祉保健センターで行われた子宮がん、乳がんの集団検診では、「密」にならないよう受診時間を分散させ、検温やアクリル板越しの問診などの対策が取られた。

 同市の担当者は「多くの住民に集団検診を受けてほしいが、感染対策を両立させなければならない」と頭を悩ませる。集団検診の受け入れを絞らざるを得ないため、市民には最寄りの指定医療機関で個別に検診を受けることも呼び掛けている。

 高岡市でも受診者数は減っており、ボランティアの健康づくり推進員を通じて促しているが、市の担当者は「今年は受診率が下がりそう」とこぼす。

 県健康増進センターは、4月以降に休止となった集団検診について、日程を再調整して実施することを目指している。ただ、感染対策として各会場の受け入れ人数を例年の8割程度としており、既に予約が取れない検診もある。

 集団検診は例年12月までだが、能登啓文所長は「スタッフも検診車も数が限られている。フル稼働でも年内に休止分の影響を解消するのは難しい」と語る。18年度は、胃、子宮、乳、大腸の四つのがんで延べ約6万7700人が受診し、135人のがんの発見につながったが、「今年はその7割程度にとどまる可能性がある」とした。

県内では毎年約3千人ががんで死亡しており、県健康課は「どの検診も感染対策に取り組んでいる。安心して受診してほしい」と話している。

■進行がんが増加

 集団検診の受診者数が減る中、治療の現場では進行がんが増えるなど影響が出ている。

 年間約2400人の新規がん患者を治療する県立中央病院では、4〜8月の手術件数が例年より10〜20%減少。自覚症状があっても感染への不安から受診を先延ばしにしたことで、進行した状態でがんが見つかった患者もいた。 

 加治正英外科部長によると、早期胃がんであれば、開腹せず、胃カメラや内視鏡で治療が可能だが、今年は開腹手術が必要な進行がん患者の割合が例年より多いという。加治部長は、全国の報告でも早期胃がんの発見数が例年の半分以下になっているとし、「早期発見できれば日常生活への復帰も早い。気になることがある人は放置しないでほしい」と強調した。

引用元:
コロナでがん検診8割減 富山県内4〜7月((Yahoo!ニュース)