保育園から「元気がなくてぐったりしている」との連絡を受け、お迎え後医院に駆け込んできた3才の男の子とそのお母さん。保育園での状況を聞く中で、教室のエアコンがあまり効いていなかったと知った陽ちゃん先生は、熱中症を疑い…?  
 
赤ちゃんやママ・パパにいつもやさしく寄り添う陽ちゃん先生こと、小児科医の吉永陽一郎先生が、日々の診察室で起きた、印象深いできごとをつづります。先生は育児雑誌「ひよこクラブ」でも長年監修として活躍中です。「小児科医・陽ちゃん先生の診察室だより」#18 

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熱中症は真夏でなくても危険!
「さっき、保育園から電話がかかってきたんです。息子の元気がなく、ぐったりしていると言われて、急いで先生のところに連れてきたのですが…」 

7月のある日のこと。3歳の男の子を連れて来院したお母さんは、心配そうに話します。男の子の様子を見てみると、目は開いてこちらを見ていますが、確かに元気がありません。洋服は、汗でびっしょりです。 
 
――ちょっと診せてください。吐いたりはしていないんですね。 

「はい。吐いてはいません。今ここに来る間に、何か飲みたいというので、ジュースを買って飲ませました」 

――○○ちゃん、大丈夫? ママが、保育園に迎えに来てくれたの?  

そう聞くと、こくんとうなずく男の子。意識はちゃんとしているようで、ひと安心です。涼しい部屋で水分をとらせながら、様子を見ることにしました。 

――お母さん。今日は、保育園で何かイベントでもあったのでしょうか?  

「いえ、特別なことはありません…。ただ、今日は暑い上、雨も降っているのに、コロナが心配で窓を閉められず、室内のエアコンの効きがイマイチだったみたいです」 

――おそらく、熱中症の第一段階だったんでしょうね。 

「やっぱり、そうですか…」 
 
熱中症とは、体温が上がり、体内の水分や塩分のバランスが崩れることで、さまざまな症状を起こす体調調節不良のことを指します。 

大量の汗が出てこむら返りが起こったり、ひどくなると吐きけや嘔吐、強いだるさ、頭痛などが起こったりします。さらに進行すると、意識障害やけいれんなど、入院が必要な状態になることもあり、油断できない病気です。 
 
――まだ症状が軽かったので、このまましばらく休めば帰れますよ。大丈夫。 

「でも、これから本格的な夏を迎えるのに…。今からこの様子では、怖いです」 

――いえ、むしろ今だからこそリスクが高いとも言えるんですよ。 

「えっ?」 
 
熱中症というと、真夏の炎天下で運動をしていてかかるなど、盛夏のシチュエーションを思い描きがちです。 

しかし、まだ夏の暑さに体が慣れていない梅雨や夏の始まりの時期にこそ、かかりやすいことも知られています。 

気温が急に上がった日や、気温だけでなく湿度も同時に高い日などは、とくに熱中症に要注意。室内にいても、熱中症にかかる可能性があります。 

また、身長が低かったり、ベビーカーに乗ったりしている子どもたちは、大人よりも地面に近いところにいるので、道路からの照り返しも強く受けます。普通に道を歩いているだけでも、体調を崩すことがあるため、気をつけてください。 そして、夏の終わりも注意が必要です。



熱中症の予防法&かかったときの対処法は?
「先生、息子を熱中症にさせないためには、どうすればいいんですか」 

――そうですねぇ。当たり前ですが、まずは暑さ対策が必要です。 

暑さ対策というと、エアコンだけを想像しがちですが、直射日光を避ける工夫も大切ですね。 

なるべく日陰を歩く、帽子をかぶる、日傘をさすなども、行ったほうがいいでしょう。服装は、涼しくて熱を逃がしやすいものを心がけてください。 

「あとは、水分補給も必要ですよね」 

――そうですね。汗でどんどん体から水分が逃げていきますから。でも、水分だけではなく、カリウムやナトリウムといったミネラルも一緒に出てしまうので、それらも入った飲料がいいですね。 

「では、スポーツドリンクですかね」 

――いえ、スポーツドリンクは糖分が多すぎます。また、カフェインが入ったものは利尿作用があり、逆効果です。ちゃんとごはんが食べられているなら、水分補給に最適なのは麦茶ですね。 

また、水分補給はたくさん汗をかいたときだけまとめて飲むのではなく、普段からこまめに飲むようにしてください。 
 
「わかりました。それでも、また今日みたいに熱中症になってしまったら、どうしたらいいですか?」 

――とにかく、まずは涼しいところに連れて行きましょう。屋外にいるなら、日陰に。できるなら、クーラーが効いている室内に。それから、身体を冷やします。体温を下げることが必要ですね。 

「そして、水分を補給する」 

――そうですね。まずは、冷たい水でもいいです。落ち着いたら、ミネラルが入っている麦茶や経口補水液を飲ませてあげましょう。 

「まず何かを飲ませるということが、すごく大切なんですね」 

――ええ。ただし、意識がぼんやりしていて、問いかけへの反応が鈍いときは、ちゃんと飲めずに気道に入ってしまう心配があります。 

そんなときは、自分で何とかしようと思わず、すぐに医療施設に行くべきでしょう。救急車を呼んでもいいと思います。いざというときのために、覚えておいてくださいね。 
 
観察室でしばらく休んだ男の子は、すっかり顔色がよくなり、医院の絵本にも飽きて退屈そうな表情に。しばらくして、お母さんに手をひかれながら歩いて帰っていきました。 
 
 
文・監修/吉永陽一郎先生 構成/ひよこクラブ編集部  
 
※写真はイメージです  



吉永陽一郎先生(よしながよういちろう)
国内初の子育て専門診療科である聖マリア病院母子総合医療センターの「育児療養科」科長などを経て、現在は福岡県久留米市の吉永小児科医院・院長。 


たまひよ ONLINE編集部


引用元:
熱中症は真夏でなくても危険! 子どもを「熱中症」から守る方法・小児科医(Yahoo!ニュース)