貧血は月経のある女性に多く起こる症状ですが、閉経後も悩まされることがあるそうです。50代以降の女性が気をつけたいポイントや、効率よく鉄分を摂取する方法を紹介します(イラスト=おおの麻里 取材・文=大田由紀江 構成=渡部真里代)

* * * * * * *

加齢によりヘモグロビンの量が減少。
赤身肉・赤身魚から十分な鉄分補給を


先進国で最も多い日本女性の貧血

貧血とは、赤血球の中で酸素の運搬を担うヘモグロビンの量が減ってしまい、体中が“酸素不足”になる症状のことです。

「2016年のWHO(世界保健機関)調査によると、日本人女性(15〜49歳)の約22%が貧血と報告されました。アメリカ人女性の約13%、イギリス人女性の約15%と比べると多く、食べ物が豊富な先進国としては残念な数字です」と言うのは、ナビタスクリニックで貧血外来を担当する山本佳奈先生。

「数ある貧血症状の中で最も患者数の多いのが、鉄不足から起きる『鉄欠乏性貧血』です。鉄はさまざまな食品に含まれていますが、含有量が少なく、体内に取りこみにくい成分なので、多くの人が不足しがち。実は、貧血対策として食品に鉄を添加する対策をしている国は多く、アメリカやイギリスでは小麦粉やシリアルに、フィリピンでは米に鉄を添加していたり、中国、ベトナム、タイでは油に鉄を強化していると聞いています」(山本先生。以下同)

国家的な取り組みのない日本では、一人ひとりが正しい知識を持ち、鉄不足に向き合う必要があります。

「体内の鉄の量は、正常値で約3〜4gです。その約65%がヘモグロビンにあり、約25%は貯蔵鉄として肝臓に蓄えられ、ヘモグロビン不足の際に放出。約5%はミオグロビンとして筋肉中に存在しています」

鉄は、ヘモグロビンの構成要素で、肺で受け取った酸素と結びつき「酸化鉄」となって、全身の組織に酸素を運搬する役割を担っています。その後はヘモグロビンの原料として再利用されるほか、毎日約1mgは汗や尿によって体外に排出されてしまうそうです。

「成人女性の場合、ヘモグロビン濃度が12g/dL未満になると、貧血と診断されてしまいます。濃度が正常値でも貯蔵鉄が少ない場合があり、そんな人は息切れ、動悸、めまい、頭痛、倦怠感など、貧血の症状が出ることも。肌荒れ、抜け毛、爪が反る『スプーンネイル』、氷を好んで食べるなども貧血のサインです」

加齢とともに、貧血の原因は多様化


貧血の一番の引き金となるのは月経の出血や妊娠、授乳ですが、「閉経後の女性にはまた別のリスクがある」と、山本先生は言います。

「赤血球をつくる骨髄や、赤血球形成に必要なホルモンを分泌する腎臓の機能が加齢に伴って衰えるので、そもそもヘモグロビンの量が減少傾向にあります。加えて、メタボリックシンドローム改善のために自己流の食事制限をしている人や、菜食主義で肉や魚を食べない人は、鉄そのものの不足だけでなく、鉄の吸収を助けるビタミンなども不足しやすいので注意が必要です」

腰痛や関節痛を抑える消炎鎮痛剤を服用していると、胃腸障害を起こし、ヘモグロビン合成に必要なビタミンB12、葉酸などを十分吸収できないこともあるそう。

「病気で胃を切除している場合は、栄養分の消化・吸収能力が低下します。消化器系の潰瘍やがん、痔など出血を伴う病気も、貧血を引き起こす原因となるので注意しましょう」

重度の貧血を放置すると、強い動悸や息切れが起きやすく、心臓に負担をかけることに。狭心症や心臓弁膜症などの心疾患がある場合、心臓のポンプ機能が徐々に低下する慢性心不全にがりかねません。年に一度は健康診断で血液検査を受けることをおすすめします。

「鉄は体内でつくることができない成分ですから、鉄分豊富な赤身肉や赤身魚などをコンスタントに摂りたいものです。推奨摂取量は、月経のある女性で1日10.5mg、月経のない50〜69歳の女性は6.5mg、70歳以上は6mgとされます」

次ページから、効率良く鉄を摂取する方法をみていきましょう。


閉経後に気をつけたい貧血リスク

●ダイエットで食事制限をしている
●ベジタリアンだ
●腰痛や関節痛で消炎鎮痛剤を常用している
●痔に悩んでいる
●胃潰瘍または十二指腸潰瘍がある
●腎臓疾患を抱えている
●病気で胃の一部を切除している
1つでも当てはまれば、貧血になる可能性が高くなります。鉄を積極的に摂取する食事をこころがけましょう

鉄の吸収率を高める食べ合わせ


意識して摂取しなければ不足しやすい鉄。効果的に取り入れ方法を知って、貧血予防・改善に役立てましょう

●ビタミンCをプラスして吸収率アップ

鉄には、肉や魚などの動物性食品に含まれるヘム鉄と、野菜や海藻などの植物性食品に含まれる非ヘム鉄の2種類があります。ヘム鉄は鉄とタンパク質が結合しており、吸収率が比較的高いので積極的に食卓に登場させたいもの。
「牛や馬、クジラなどの赤身肉や、カツオ、サバ、イワシ、アジなどの赤身魚は、筋肉部分にミオグロビンが多く含まれます。レバーには、肝臓の貯蔵鉄がたっぷり。赤血球合成に欠かせないビタミンB12や葉酸も含まれています」(山本先生。以下同)
一方の非ヘム鉄は、のり、ひじき、わかめ、小松菜、パセリ、切り干し大根、大豆、ごまなどに豊富に含まれています。
「吸収率はヘム鉄の約5分の1ですが、酸と結合することで腸管から吸収されやすくなります。ビタミンCを多く含む野菜や果物と一緒に摂るとベストでしょう。よく嚙んで胃酸の分泌を高めることも効果的です。肉や魚が苦手な方は、サプリメントで鉄を補うのも手。また、調理に鉄製の鍋やフライパンを使うと、わずかながら鉄が溶け出し補給の一助になります」

ーーーーー



非ヘム鉄を多く含む食品 吸収率:2〜5%

のり、ひじき、わかめ、小松菜、パセリ、切り干し大根、大豆、ごまなど



ーーーーー


ーーーーー



ヘム鉄を多く含む食品 吸収率:23〜35%

牛や馬、クジラなどの赤身肉、カツオ、サバ、イワシ、アジなどの赤身魚、あさりなど



ーーーーー


●鉄の吸収を阻害する食材を知っておく

ビタミンCのように鉄の吸収を助けてくれる栄養素もあれば、反対に、鉄の吸収率を低下させるものもあります。乳化剤や安定剤、防腐剤として食品に添加されるリン酸塩には、鉄の吸収を妨げる作用があり、ハム、ソーセージ、インスタント食品、スナック菓子に多く含まれるので要注意。
「玄米や麦芽に含まれるフィチン酸は、鉄と結合して体外へ排出させる働きがあります。また、牛乳やチーズに多く含まれるカルシウムも鉄と相性がよくありません。せっかく鉄分の多い食事を摂っても、こうした食材と一緒に摂ると、鉄が十分に吸収されない場合があります。鉄の吸収を妨げる食材を摂る場合は、食事で鉄を摂ってから30分〜1時間後ぐらいに摂るなど、ひと工夫するといいでしょう」

ーーーーー



鉄の吸収を阻害する食品

・牛乳、チーズなどのカルシウム
・ハム、ソーセージ、スナック菓子などのリン酸塩
・玄米、麦芽などのフィチン酸



ーーーーー


●おやつには、鉄分入りスイーツを

「近年は、鉄分を添加したスイーツが多数発売されています。三度の食事だけではどうしても不足しがちな鉄分を手軽に補給できるので、活用しましょう」
このほか、カシューナッツや松の実、カボチャの種やピスタチオなどのナッツ類や、プルーン、イチジク、レーズンなどのドライフルーツも鉄が豊富です。


引用元:
日本女性の22%が「貧血」。鉄の吸収率を高める食べ合わせは?(BIGLOBEニュース)