今年の7月21日、8月2日は土用の丑の日です。土用といえばやはり「鰻(うなぎ)」。

ウェザーニュースが会員に対して行ったアンケート調査によると、土用の丑の日に鰻を食べている人は、「よく食べる」が31%、「食べる年もある」が39%という結果でした。「食べる年もある」を含め7割の人が土用の丑の日に鰻を食べているようですが、実は天然鰻の旬は夏ではなく、冬眠の前にたっぷり餌を食べて栄養を蓄える晩秋から冬だそうです。
では、なぜ夏に鰻を食べる風習が定着したのでしょうか。歳時記×食文化研究所の北野智子さんに伺いました。

江戸のコピーライター、平賀源内の仕掛け
「土用の丑の日」の風習は江戸時代から始まったそうです。

「エレキテルの発明でも有名な平賀源内が、毎年夏枯れで客が来ないのを嘆いていたなじみの鰻屋に頼まれて、PRしたのが始まりだという説があります。夏の土用に鰻を食べると夏負けしないとPRするため、『本日土用の丑の日』と書いた引札(現代の広告コピー)が大当たり。以降、『夏の土用は鰻』を定着させたといわれています。

江戸の庶民は日頃は質素な食事をし、薬も少なく、夏バテは命取りともなったので、食べられるときにはできるだけ精のつくものを食べようとしました。その要求にマッチしたのが平賀源内の仕掛けだったのかもしれません。

また、『土用の丑の日』の風習の起源ではありませんが、すでに奈良時代から、『夏痩せには鰻』を食べていたようで、大伴家持が、友人の吉田連石麻呂(よしだのむらじいしまろ)に向けて、『石麻呂に吾もの申す夏痩せに よしと云ふものぞ鰻(むなぎ)取りめせ』と詠んだ歌が万葉集にあります」(北野さん)

鰻は豊富なビタミンの宝庫
この「土用の丑の鰻」の風習に加えて、鰻には夏に摂るべき栄養素が備わっていたことが、夏に定着した一因ではないか、と北野さんは話します。

「鰻は、ビタミンA、B1、B2、D、E、コラーゲン、DHA、EPAなど体に必要な栄養素が非常に豊富に含まれています。特にビタミンAは身体の抵抗力を高め、骨や歯の発育を促進し、目にも良いと言われますが、脂と一緒に摂ると吸収率があがります。鰻は脂肪分が多いので、非常に効率的に体に摂り込むことができるのです。

その他、ビタミンB1は疲労回復に、B2は髪や爪、肌の健康を保持する働きがあるなど、まさに栄養満点、スタミナがつく魚で、夏バテ予防にぴったりの食材だったのです」(北野さん)

こんなに身近なのに、絶滅危惧種にも指定されている鰻の生態はまだ謎が多く、卵からの完全養殖は商業的には実現していません。現在は天然の稚魚を捕獲して養殖していますが、今年は稚魚が久しぶりの豊漁だそうです。

養殖鰻は餌の量や環境が管理されているので、その味は1年中ほぼ変わらないと言われています。稚魚の豊漁で少しだけ手が届きやすくなるかもしれない鰻を食べて、この夏を乗り切りましょう。

引用元:
土用の丑の日 旬は秋〜冬なのに、夏に鰻を食べるわけ(ウェザーニュース)