近年、「それまでは何も感じなかった姑や夫、上司や同僚といった周囲の人たちの存在が、出産後には負担やプレッシャーに感じてしまい息苦しくなる」というママの声が増えているようです。

そこで今回は、身近な人たちの言動や行動がイヤミに思えて暗い気持ちになった事例を取り上げつつ、そうした変化が注意信号であるかもしれない「産後うつ」のリスクについて見ていきます。

■事例1:見た目の変化に関すること

出産で「体型が崩れた」とショックを受け、見た目に関する会話が自分に向けられているように感じて落ち込むママもいるようです。特に働くママは、職場や取引先などで人と会う機会も多く、出産前の会話などが影響して余計に気に病むこともあるようです。

●Aさん(夫の会社で事務兼秘書、20代後半)のケース

「旦那は、付き合っていた頃から、デートのときでもすれ違った女性の体形や胸の形を褒めるということが多い人でした。たまにヤキモチを妬くことはあっても、ヘコんだりケンカになったりするようなことはなかったのですが、産後に他の女性の体型を褒めるのを聞いたときは涙が出そうになりました」

●Bさん(事務兼営業、30代前半)のケース

「毒舌で有名な取引先のM氏とは、お互いグサグサくるようなことを織り交ぜながら日常会話をするという関係だったんです。でも、産後に『出産したら痩せるって言ってたけど、全然痩せてないな。相変わらず、どらえもん体型』と言われ、なぜかその言葉が頭から離れず落ち込んでんでしまいました。そして、M氏と会うたびに嫌悪感を覚えるようになり、担当を代わってもらうことに…」

■事例2:母乳をめぐる発言に関して

「子供が小さいうちはそばにいたい」と思っても、家庭の事情や職場の都合などで、出産後すぐに働きに出ないといけないケースも少なくありません。それなのに、姑や周囲の友人から「母乳じゃないの?」と言われ、「自分は母親失格なのでは?」と落ち込む人も多いようです。

●Cさん(アパレル販売員、20代前半)のケース

「そんなに早く仕事に復帰するの? じゃあ、粉ミルクだね」と言った義母の言葉に、母乳で育てられないことを責められているように感じて、すごくショックでした。夫婦共働きじゃないと生活できないという状況もあり、強い劣等感にも苛まれるなど、離乳食が始まるで複雑な気持ちで過ごしたのを覚えています」

●Dさん(管理職、40代前半)のケース

「産後1か月で仕事に復帰し、慣れない赤ちゃんのお世話や仕事のストレスもあったからか、母乳の量が少なくなって悩んでいました。それなのに旦那が、『赤ちゃんには母乳がいちばん』とか『母乳で育てると病気になりにくいらしい』とか言ってきてやり場のない怒りをおぼえました。

旦那自体は悪気があって言ったわけじゃないとはわかっていても、母乳が出ない自分を不甲斐ないと思いましたし、赤ちゃんにも申し訳ない気持ちでいっぱいで苦しみました」

■事例3:働き方に関すること

赤ちゃんのお世話などの関係で、出産前とは働き方が変わるママも少なくありません。勤務時間の短縮や内容の変化に関する発言をはじめ、周囲の過剰な気遣いが精神的に大きなダメージとなり、仕事をやめるという選択肢を選ぶ人もいるようです。

●Eさん(商品企画、30代前半)のケース

「産後、すごく頑張って企画した案件について、『リーダーを任せると残業もつきものだし、今回はサポートに回ってくれる?』と言われてガックリ。その後は、何かと『〇〇さんは、保育園のお迎えがあるでしょ?』とか『お子さん、風邪を引きやすい時期じゃない?』とか言われて疎外感を感じるようになったんです。周りの配慮だったのかもしれませんが、メンタル的に限界がきて、結局は会社をやめてしまいました」

●Fさん(イベント関係、30代前半)のケース

「仕事に復帰してすぐ、立て続けに子供が発熱して何度も早退することになってしまい、申し訳ないという気持ちが募っていきました。見かねた母が近くにマンションを借りて子供の面倒を見てくれることになり、それまでの巻き返しをはかろうと、自ら進んで残業や休日出勤を引き受けるようになったんです。

慣れない赤ちゃんのお世話で睡眠時間は削られ、眠気のせいで仕事のミスが増えたものの、そのままペースで働き、半年ほどで体調を崩して会社を退職することに。いま思えば、悪循環なのはわかっていたものの、仕事や休日出勤をすることが『必要とされている』という実感につながっていたように思います」

■ネガティブな気持ちは「産後うつ」のサインであることも

もし、妊娠や出産前まで良好な関係を築いていた身近な人の言葉や行動が、出産後にポジティブに受け取れなくなったというときは、注意信号かもしれません。

厚生労働省が運営する「e-ヘルスネット( https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-001.html )」によると、女性は男性の2倍「うつ病」にかかりやすく、女性の場合12人に1人が一生のうち一度はうつ病に陥ること、妊娠中や出産後はうつ病が起こりやすい時期であるとされています。また、約10人に1人が「産後うつ」を経験するとも報じられています(日本経済新聞「産後うつ予防へ健診費助成 厚労省、不調を早めにケア( https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG09H1Z_Z01C16A0000000/ )」)

このような情報を総合すると、やはり産後はささいなことにも敏感になり、精神状態が不安定になりやすい時期だと言えるでしょう。

もし、出産後にネガティブに感じることが増えたと感じているのなら、「エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)」という自己記入式の質問に答えてみることをおすすめします。これは、英国王立精神科医学会が著作権を持つもので、病院や市区町村によってはすでに導入され、妊娠中や産後の検診などに組み込まれている場合もあるようです。

興味のある方は一度、出産した病院やお住まいの自治体に質問票の入手先について尋ねてみてください。

■おわりに

妊娠は、自分のなかに「もうひとつの命が宿る」というとても神秘的な現象であり、出産は「自分の中からもうひとつの命が誕生する」素晴らしい瞬間です。一方で妊娠や出産は、母体にさまざまな影響を与えるとも言われています。

出産後、「気持ちが落ち込む」「周囲の言葉がイヤミに聞こえる」「明るい気持ちになれない」と悩んでいる人は、無理をせず心療内科や出産した産婦人科などに相談してみてください。


引用元:
出産後の「姑や夫、職場の人が私にイヤミを言っている!」それは産後うつのサインかも…(ニフティニュース)