政府が希望出生率1.8の実現に向け、今後5年間の指針となる少子化大綱を5月29日に閣議決定した。2019年の合計特殊出生率は1.36と前年を0.06ポイント下回り、4年連続で低下。何らかの対策が必要なのは明白だが、今回の少子化大綱で目を引いたのは、不妊治療に対する保険適用の検討が盛り込まれたことだ。

 不妊治療で産まれる子供は年々増加傾向にあり、約20人に一人が不妊治療によって産まれている。国としてはこの現状を重く受け止め、施策に乗り出したと言える。政府は今年度中にも実態調査を行うとしたが、不妊治療と一言でいっても、方法や技術など、また、金額や対象年齢にも医療機関によってばらつきがあり、明確な決まりがない中で、整備するためにはまだまだ課題が多い。

「一刻も早く、保険適用の実現化に向けて動いて欲しいですね」

 そう話すのは、不妊治療歴8年になるAさん(42歳)だ。Aさんは人工授精10回、体外受精も8回行い、治療に費やした合計費用は300万に上る。一般的に、不妊治療は初期費用だけで、約100万円かかる。回数が増えるごとに、数十万単位で金額がかかるとされ、中には1000万円を超える人も多くいる。

■「次こそは」と思ってやめられない

「次こそは、という思いが常につきまとい、やめるにやめられない状態です。私と主人、共働きなので、贅沢な暮らしをしなければ、治療に費やすお金があり、やめどきが決められません。今は40代前半ですが、最近、華原朋美さんやhitomiさんなど、高齢出産の方が多くいらっしゃり、私も45歳までは頑張ろうかなと思っています。今年度中に実態調査するということですが、保険が適用されるのも早くて来年ですよね。少子化、少子化、と言っているのであれば、一刻も早く、保険適用にして欲しいですね」(Aさん)

 不妊治療による妊娠率は約30%で、不妊治療をすれば必ず妊娠できるものではない。Aさんのように、「次こそは」という思いから、治療のやめ時を見失い、苦しむ人がいるのも事実だ。その苦しさから、夫婦の亀裂が走り、離婚する人もいる。

 また、昨今の芸能人の高齢化出産も不妊治療をしている人々にとっては、勇気づけられる反面、治療をやめられない足かせになっているようだ。

 政府は治療費助成を受ける際の所得制限の緩和も検討するという。現状では、夫婦の所得が730万円以下でないと助成を受けることができない。初回は30万円、その後も、15万円(採卵を伴わない場合7.5万円)が補助される(40歳未満6回、40歳以上43歳未満3回まで)。

「夫婦、共働きであれば、ほとんどの方が助成を受けることができないのではないでしょうか。我が家も夫婦の所得が720万円より少し高いだけです。それで、所得1000万や2000万円などの人と一緒にされるというのは疑問を感じます」(Aさん)

■医療機関によってばらつきがある治療法や金額

 2016年、国が不妊治療費を保障する民間保険を解禁し、多くの保険会社が取り扱いを始めたが、不担保期間を設けたり回数制限があったりと、不妊治療に向き合う人にとっては正直、無意味なものばかりだった。それから約2年、ようやく国が動き出す運びとなった。

 保険が適用になると、経済的負担は軽減されるが、冒頭でも述べたように、医療機関によって、方法や技術、金額や治療対象年齢にばらつきがあり、保険適用に向けてのハードルは高いと言える。

 また、不妊治療は金額だけの問題だけではなく、会社や周囲の理解が不可欠だ。

「治療するにあたり、明日来てください、と急に言われることなんてざらですし、移植日は排卵日に合わせて行われるので、会社を休んで行かざるを得ない。幸い、私の会社は理解があり、そこは大丈夫ですが、そのような事情を知らない会社が大半だと思います。その点も国が率先して周知するようにしてくれればありがたいのですが」(Aさん)

 昨今の幼保無償化を始め、児童手当や医療費助成といった、少子化対策に向け、国は今まで様々な施策を行ってきた。しかし、まだまだ、出生率1.8は厳しいのが現状だ。今回の不妊治療の保険適用に向け、国の動きは歓迎されるべきではあるが、そのための周囲の整備も不可欠である。


引用元:
不妊治療に保険適用検討…難しい対象の線引きと周囲の理解(Yahoo!JAPANニュース)