精子が成熟するための鍵になるたんぱく質を、大阪大学などのチームが見つけた。このたんぱく質が、精巣につながる「精巣上体」を刺激することで、成熟できる環境が作られていた。将来的には男性不妊の診断や、不妊治療などへの応用が考えられる。論文を5日付の米科学誌サイエンス(電子版)に発表した。

 精子は、精巣にある管の内側で作られるが、作られたばかりの時は受精能力を持たない。管を通って精巣上体に送られ、2週間ほどかけて成熟し、受精する能力を得る。これまで、成熟の詳しいしくみは分かっていなかった。

 チームは、マウスの精巣で働く遺伝子を調べ、思春期に当たる生後14日ごろからよく働くといった条件から、精子を成熟させることに関係する、精子のもとの精細胞で作られるたんぱく質「NELL2」を見いだした。

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 NELL2が精巣上体に運ばれ、精巣上体のたんぱく質と結びつくと、精巣上体の管が分厚くなる。さらに、その状態の精巣上体が出す、精子を成熟させる酵素もつきとめた。この酵素は、未熟な精子の膜にある特定のたんぱく質を短く分解して、精子を成熟させるとみられる。

 マウスの遺伝子操作で、NELL2や、この酵素をなくしたところ、精子は見た目には異常がないのに、卵巣から卵管へと進めなくなり、人為的に卵子と出会わせても受精できなくなった。

 また、今回の結果は、体の外に物質が出て行く管(外分泌)を通じて、体の組織に刺激を与える因子が働きかけることを示す、初めての例だという。

 大阪大の伊川正人教授は「精子ができるのに不妊になる場合の原因究明や、治療法選択の助けになると考えている。また、汗腺や涙腺など、外分泌系の組織でも、管を通って違う組織の間で連携して働くしくみが考えられ、生命科学そのものの発展に貢献するのではと期待される」と話した。(杉浦奈実)

引用元:
精子成熟の鍵を発見 男性不妊の解明に一歩 大阪大など(朝日新聞)