新型コロナウイルスの感染拡大で病院などでの面会制限が続くなか、出産時に家族が立ち会うことを禁止する産院も多い。中には妊産婦の要望の声を受け、オンラインで出産を中継することを認めるケースも。事前準備が思うようにできず不安を抱く夫婦も多いが、専門家は「夫は立ち会えなくても別の形で子育てに関わって」と呼びかける。

「出産の痛みだけでなく心細さで涙が出た」。東京都新宿区の女性会社員(26)は4月下旬、初めての出産で数時間の陣痛をほぼ1人で耐えた際の不安を振り返る。「両親学級」に夫婦で出て出産に向けた準備を進めていたさなか、新型コロナの感染防止のため産院が立ち会い出産を禁止とした。

区の妊婦講習で「出産時は夫のサポートが大切」と聞いていた分、理想とのギャップに戸惑いが大きかったという。産後の面会も禁止され、夫が子どもに初めて会えたのは出産から約1週間後の退院時。女性は「生まれたばかりの赤ちゃんの姿を夫婦で共有したかった」と悔しがる。


新型コロナにより妊産婦の多くが通常の出産と異なる対応を迫られている。日本産科婦人科学会は4月、ホームページで妊婦向けに「感染予防のため立ち会い分娩を制限する」と伝えた。ベネッセコーポレーションの出産・育児ブランド「たまひよ」が4月に全国約3200人の妊婦に新型コロナの影響を尋ねたところ、51%が「出産時に配偶者などが立ち会えなくなった」と答えた。

近年、立ち会い出産は増えている。子育て関連サイトを運営するベビーカレンダー(東京)が2018年に約2500人の出産経験者に行った調査では、74%が立ち会い出産をしたと回答。15年前に比べて割合は2倍以上に増えた。立ち会った父親の95%が「満足した」といい、54%が「(夫婦で)感動を共有できた」と答えた。

新型コロナ禍における妊産婦の不安や夫婦の要望に応え、オンラインで出産に立ち会うことを認める動きも広がっている。神奈川県鎌倉市の産婦人科「矢内原医院」では4月下旬から妊婦本人がスマートフォンを使い、通信アプリのビデオ通話機能などで院外の夫に分娩の様子を中継できるようになった。

担当者は「分娩中の妊婦さんの孤独は計り知れず、夫の声かけは大きな助けになる」とオンラインでの立ち会いを提案している。

関東の病院で4月に長男を出産した女性(34)は、LINE(ライン)のビデオ通話機能を使って出産の様子を夫に伝えた。「初めての出産で、夫の声が聞こえて安心した」と話す。夫(34)は「録画機能で記録を残すこともでき、良い思い出になった」と喜ぶ。

産婦人科でのさまざまな制限に不安を抱くのは男性も同じだ。父親教室などを手掛けるサービス会社「アイナロハ」(埼玉県)の代表、渡辺大地さん(39)の元には、妻の出産を控えた男性から「沐浴(もくよく)実習など退院後の育児に必要なことが対面で学べない」などの悩みが寄せられているという。

渡辺さんは「新型コロナの影響で家庭で過ごす時間が増えた父親も多いはず。夫婦で育児の役割分担を話し合い、出産に立ち会えなくてもベビーベッドの組み立てなど家庭でできる準備も進められる」と話す。

引用元:
戸惑う妊産婦、立ち会い出産NG オンライン中継も(日本経済新聞)